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あやかしの見た残景
深淵から見た空は濁っていた
かくも奴らが汚した赤い如く
陽の光とはなんとも悪い
海中へ落ちてくる残骸は役にもたたない
そもそも我には必要ないのだが
むしろそれらは邪魔でしかない
またひとつ大きな残骸が落ちてくる
それは泥々した液体のようなもの
どういうわけか体に纏わりつくのだ
鬱陶しい鬱陶しいと振りほどこうとも
解けることなくやがては塊として落ちる
奴らが営みというのであれば
我がする行為も我らの営みであろう
それなのに奴らは他を認めない
なんとも嘆き悲しい
いつかの日にそして我は海面から顔を出した
もうじきなのだから一目くらいは見ておきたい
そこに広がっていた世界は記憶にある
深淵より覗いてみていた頃の汚れさはなかった
いつからか太陽は紅く輝いていたのだ
なんとも驚いたことだった
彼らは一体何をしたのだろうか
見上げればどこまでも続く青い色
これが深淵から見えていた空だというのか
海面は穏やかに波に揺らされている
そこにかつての喧騒はなかったのだ
じきに我はまた深淵へ戻った
暗い光のない淵で眠りについたのだ
目を閉じる間際にこう思ったのだ
『彼ラハ過チヲ犯シテモソレヲ正セタ』
白い光が落ちるなかで我は願うたのだ
出来ることなら彼らがこのまま
穏やかな海を見守り続けてくれるように




