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エゾギクの語り部に

 

閉ざされた町を抜け出して

さまよう人形はひとり泣く

あの人はどこへ行ったのだろう

それでもなお探し続ける


町へ町へ渡ってまださまよう

どこまで来たのか分かりさえしない

ここはどこ?

答える人などいるわけない


継ぎ接ぎの手は壊れて取れた

手を繋ぐことは出来なくなった

それでもなお歩き続ける

愛しき人に会うために


森を抜けて山を抜けて

壊れていく人形は

もはや可愛らしい異形

道行く人に語られる


そして誰もいない夜に

人形は動き出す

見えずともひたすら歩く

今度はどこが壊れるだろう


いつの間にか腕に咲いていた

青いエゾギクは語りかける

そこまでする必要があるのかい

もう理由なんて覚えてない


明くる朝に人形は

ついに壊れた足を見る

もう歩くことはできないさ

笑って泣いて手を伸ばした


さよならもいえないなあ

そろそろもう戻る時間

楽しかったあの頃へ

またさよなら


椅子に座った人形は

途絶えることなく夢を見た

スターチスの花はまだ咲いている

少女の手のひらのうえ

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