story10
……久々の更新。
けれど短すぎた!
「明日香、着替えて来てくれ。目の毒だから」
寮の自分の部屋に入ると、リビングで腕組みをしている男が2名。
そして、私を見てポカン……とし、すぐに顔をそらし、そんなことを言った。
おとなしく引き下がるが、
「悠馬、ムッツリなんだな」
と一応からかっておかないと何か気が済まなかった。
取りあえず、制服は明日クリーニング。
予備のウイッグを部屋の端に置いてあるダンボールから出す。
かぶった後、サラシを巻き、部屋着に着替える。
と言ってもスポーツメーカーのジャージ。
寝巻用にお義母さんがジンベイの様なものを買ってくれたのを思い出したが、あれは寝る時にしておこう。
自分で言うのは何だが、あれはただの浴衣と同じようなものだ、羽織って紐で結ぶだけの。
それでリビングに戻る。
「お待たせ」
「……多賀、説明してもらっていいか?」
「嗚呼、説明する」
真剣な表情をして植木に問われたので、男装していた理由を話した。
孤児院については抜きにして。
と言っても、大まかな理由が成績で1位を取るため、と答えた。
「…ありがとよ、今日は先に飯食っちまったから作る必要は無いぜ」
「ごめんね。今日も一応夜食作るつもりだけど何か食べたいものある?」
「そうだな……軽いサンドイッチ頼む」
「分かった。いつもくらいの時間にお邪魔するよ。悠馬は?」
「俺は別にいらねえよ」
「分かった。取りあえずお風呂入ったりしたいから出てってもらえるか」
「嗚呼、それならお前が口を酸っぱくしていつも夜に入ってくるなって意味が分かったぜ」
そんなことを言いながら植木と悠馬は自分の部屋に行った。
取りあえず、先にシャワーを浴びたい。
体は少し汗ばんでるし、髪もちゃんと手入れをしないとお義母さんに次に会った時なんて言われるか分からないからしておかないと。
午後、10時30分。
植木の部屋に勝手に入ってリビングまで移動。
植木はいつものごとく、風呂上りのストレッチをしていた。
「BTLのサンドイッチとためしにハムカツにタルタルソースかけて挟んだ奴」
「ありがとよ」
そう言ってストレッチを最後までしてから食べる。
「ホント、その食欲がうらやましい。筋肉をよこせ」
「ラガーマンはガタイがよくないと役に立たねえからな」
と、身長的に普通に見下してる状況。
ぐっ、女子の中ではちょっと高い方なんだぞ!
「そう見下さないでくれ、身長165の私にケンカを売ってるのかこの巨人」
「あー、悪いが俺は巨人よりホークス派だ」
「そういう意味じゃないよ!いつから野球の話になってんの!?」
「わりーわりー、なんか癖でボケないと眠れないだよ」
「ボケて永眠しないようにしてくれ」
軽い、つも通りの会話。
何か嬉しいな。
そんなことを考えるとついつい頬の筋肉が緩む。
「ちょっと待て、その笑顔は反則だ」
「仕方ないと思って。女だと分かってもいつも通りに接してくれるのが嬉しいんだよ」
「……襲うぞ、本気で」
「ラガーマンに押し倒されたら本気で最後まで行きそうだからやめてくれる?」
ここで、植木なら……
なんて言える根性はない。
ここ一年以上の付き合いだから、この手の所で冗談は基本言わないと分かる。
「は~、それにしてもお前みたいな人が奥さんだったら将来安心して暮らせる気がする」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。売れ残りとかになったら植木にもらってもらおうかな……」
売れ残り、なんて一種の差別用語だが、30代、40代の独身の婚期を逃してしまっている人のことを言うらしい。ホントかは分からないが。
「と言っても、多分植木は20台で結婚しちゃうんだろうな。人柄がいいし、優しいし、割と気さくだから。後なんか守ってくれそうな感じがするよ。本当に」
「なぁ、それは遠まわしに襲ってくれと言っているのか?」
「ははは、違うよ。恋愛経験値0の初心者でファーストキスもまだなお子様にそんなハイレベルなこと言わないでくれる?」
「……意外だな」
何か、そよかぜ園でも同じようなことを言われた。
素敵な恋愛してる?とか。
こっちは初恋もまだなんですよ。と返したら以外とか言われた。
料理はできるし、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるし、それに綺麗だからもうとっくに彼氏とか居るんだと思った。
って瑞希に言われた。
ついでにお子ちゃまなんだね、とかも。
「あー、なんていうか、多賀、俺の事名前で呼んでくれないか?」
「大地?」
「ぐはっ!?こ、これほどの威力があると言うのか!と言うか首をかしげないでくれ、普通に可愛いから!」
「ははは、お世辞でも嬉しいよ。そうだな、植木を大地と呼ぶなら私のことは明日香で構わないってことでいいかな」
「……………………お前、それ素でやってるとしたら相当天然入ってるぞ」
「よく家族に言われる」
特に武から。
自然と臨んだことをやってくれるとか、なんていえばいいのかわからないけど、相当ヤバい!
と言うか、たまに抜けてるから天然ってことにしといてくれ。
とか。
「そろそろ、寝るよ私は」
「嗚呼。その前に一つ聞いていいか?」
「何?」
「今、彼氏とか作ろうと思ってんの?」
「今は思ってないよ、卒業までには作ると思うけど。それじゃ、お休み」
「…嗚呼」
そう言って、なんだか微妙な雰囲気で部屋を出て行った。
次回から、ついに先生の回で投げておいた『林間学校編』へ!
………まぁ、甘い話が欠ければいいかなって思っています。




