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優雅の体が地面に落下した。
その姿に纏った炎は弱々しくなっており、それでも彼は、なんとかして立とうとしていた。
真紅の炎のせいで見え辛いが、あちこちに紅い血が流れている。
ようやく立ち上がっても、彼は立っているだけで一杯一杯だった。
「……父さん……」
ぼろぼろになった父の姿を見て、優真は辛そうに呟く。
だが、このままじゃ何の解決にもならないということは、優真自身がよくわかっていた。
例え瀕死にしようと、説得をしようと、元に戻すことは出来ない。
ただ、方法が無い訳ではなかった。
暴走したメイデンの処遇を考え直してもらおうと、創世神の元に赴いていた時、連れていかれた麒麟の本拠で彼に言われたことがあった。
『最後の最後でわしに放ったあの技なら、あんなことせんでも元に戻せたのではないか?』
その言葉が優真に与えた衝撃は大きかったが、例えそれを前もって知っていたとしても、優真は使わなかっただろう。
なぜなら、優真が最後に麒麟を倒したあの技は失敗したのだから。
「多分……次も失敗したら……あれを受ける父さんは死ぬ……」
そう思うと、刀を握る手が震える。
だが、方法がそれしか思いつかない以上、それ以外の選択肢はない。
早くしなければ、回復して、また最初からやり直しになってしまう。
そんな焦りが俺の心を支配しようとしたそんな時だった。
『貴方は何故剣を握るのですか?』
そんな言葉がどこからともなく聞こえてきた。
俺はすぐに辺りを見渡すが、この場には俺と父さん以外の人物はいない。
「……なんで剣を握るのか?」
その言葉は、ハルマハラさんに剣の教えを請うとき、初めて問われた質問だった。
子ども達の世話をするのに剣は必要ない。にもかかわらず、剣を覚えたいと言った俺の意思を聞きたいのだと彼は言った。
「俺が剣を握る理由……そんなの……決まってる!!」
そう言って剣を握った時、俺の手は震えるのをやめていた。
「俺は、大切な人達を守る為に剣を振るう。今も昔も、俺にそれ以外の理由なんて無い!!」




