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エパルの特殊能力が発動する。
ぼろぼろになった園庭に刻まれていく紋様は、彼女が本気である証。普段は人を振り回すことに全力を注ぐエパルの本当の力が、今、ここに刻まれる。
「カオス・ルーム」
園庭に刻まれた紋様が光を発し始め、彼女の言葉と同時に一つの黒い立方体が完成する。
それがなんなのかはわからない。
だが、一つだけ言えることがあるのだとするのならば、優真の父、雨宮優雅は、その立方体のキューブに閉じ込められ、姿が見えなくなっていた。
「……あれ?」
その言葉と共にパルシアスが首を傾げる。そして彼は、そのキューブを指差しながらエパルに視線を向けた。
「なんでユウマを一緒に入れてないの? これじゃーー」
「黙って見ておれ。こと空間のことに関して言えば、妾の方がお主より上なのじゃぞ? お主やユウマの注文に応えつつ、それ以上の結果を出す。それが、あの方の王としての役目じゃろ?」
エパルは自慢気にそう言うと、指を鳴らした。
それが、もう一つの合図だった。
先程よりは小さいものの、園庭に不思議な紋様が浮かび、そこに光がもたらされる。
「妾はもらったお菓子は返さんが、もらった恩義は10倍にして返す女じゃ。……よって、妾の怪我を治してくれたお主らの望みを叶えてやるのじゃ」
その言葉を言い終えるのと同時に光は消え、先程まで誰も居なかったその場所に、彼女達は立っていた。
「…………優真?」
「……万里華? それに皆も? ……なんで?」
その時見せた優真の表情には、怒りも、悲しみも、喜びも存在しなかった。
ただただ驚きだけが、彼の表情には表現されていた。
◆ ◆ ◆
「エパル……?」
優真はその意味不明な行動に対して、それを行った張本人に視線を向ける。
しかし彼女は、その視線を明後日の方向に向けながら口笛を吹き始めた。
「妾~子どもだからお兄ちゃんがなんで怒るかわかんな~い……でも……」
突然、エパルのトーンが真剣味を帯びた。
「ユウマが今からやることを彼女達に黙ってやるのは間違ってると思うのじゃ」
その言葉を聞いた瞬間、万里華の表情が青ざめる。
「えっ……どういうこと、優真? あなたいったい何をしようとーー」
その質問に答えたのは優真でも、ましてやエパルでもなかった。
「ユウマには今からこの中で答えを出してもらう」




