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横を見ると、いつの間にかシルヴィは泣いていた。
…………残酷な話だ。
前に一度、婆さんに聞いたことがある。
シルヴィとシェスカの両親は今どうしているのか、と。
すると婆さんは悲しそうな顔で「死んだよ」と告げてきた。
それ以上聞けなかったが、先程の話から、シルヴィとシェスカの両親はその時、亡くなったんだと思う。
娘を守るために、自分の命を顧みずに戦った。
……俺なら出来るだろうか?
人と自分を比べるのは好きではないが、それでも、思ってしまう。
もし、自分の娘や息子が国にとられたら、その身を犠牲にしてでも、取り返そうとすることが出来るのだろうか?
目の前に群がる壁の一つ一つを読み上げて、自分には無理だ、と暗示をかけるだろうか?
だが、この答えは、今の俺には出せない。
俺には自分の子どもはいないし、そもそもお相手だっていない。
……でも、もしその時が来たら、……どうせなら、国に楯突いて欲しいかな。
◆ ◆ ◆
沈黙が続く。隣の少女がすすり泣く声だけが聞こえる。
……彼女になんて声をかければいいんだろうか。どう声をかけるのが正解なんだろうか。
俺がその事で悩んでいると、地下室の扉が開かれ、陽の光が射し込んできた。
「おらっ、召集はもう終わったよ。二人とも早く出ておいで!」
上から婆さんの声が聞こえてきて、俺は体育座りの状態を解除し立ちあがったが、シルヴィは泣いたまま、立ち上がろうとしなかった。
彼女にこんな辛い思いをさせた身としては、シルヴィをそのままにしておく訳にはいかなかった。
「……ごめん。辛いこと思い出させてしまって」
シルヴィに向かって謝ると、シルヴィは首を横に振った。
「……ユーマさんは何も悪くありません。ユーマさんもここに住むんだったら、知るべきですからね」
こういう時、漫画やラノベの主人公なら、俺がお前を守ってやる、くらいのセリフを言えたんだろうな。生憎、俺にそんな勇気は残されてないわけで、……あ~自分が情けなくなる。
「……なら、戻るか。兵士も帰ったって言ってたし」
「はい。ご迷惑おかけしてすみません」
シルヴィは俺の横をすり抜けて、地下室からでた。
その後ろ姿を見ていると、なんだかとても愛おしく思えた。
(……俺は、強くなりたい。少し強くなった程度じゃ駄目だ。もっと、もっと強くなりたい! どんな奴からでも、シルヴィを守れるくらい強く!)
優真はその誓いを胸に外へ出た。




