28-21
「バートラムさんから? ……その手記もう読んだの?」
その質問に、シルヴィは黙って頷いた。彼女の瞳は哀しそうに手記の方を見ている。
大事なことが書かれているのだろう。いくらシルヴィと婚約しているとはいえ、俺は部外者だ。この手記を見る資格が果たして俺にあるのだろうか?
わからない。……ただ、俺も家族からもらった手紙を万里華に見せたことで、少しだけ気が楽になった。
あの時とは状況が違う。立場も違う。だから、同じ結果になるとは限らない。本当は見てほしくないのかもしれない。興味がないと言えば嘘になる。
だが、シルヴィの気持ちを尊重しないやり方はとりたくない。
「なぁシルヴィ……嫌なら素直に言ってほしい……この手記拝見してもいいか?」
シルヴィは何も言わない。ただ、黙って頷いた。
「……それじゃあ拝見するよ」
シルヴィの母親に当たる人物、サナさんからの手紙を要点だけさらうとこうだ。
・生を受けたシェスカが神童で、能力は不明だが、それを旦那さんとかなり喜んだ。
・眷族のいない子どもを司る女神にシェスカを眷族として捧げたいと思っていた。ただ、その為にはチャイル皇国に戻る必要がある。
・この国に居れば、シェスカがどうなるかわからない。そして、先日の村の子どもが孕まされて帰ってきた時のことを思いだし、シェスカのために、チャイル皇国に移り住むことを決意する。だが、既に王都付近の町で働いている大事な娘を置いていくなんてことはできない。
・シルヴィ奪還計画を決意し、個人的な理由で村の者達に協力してもらう訳にもいかず、また、二人では絶対に不可能という結論が出たため、長年連絡してこなかった兄に協力を仰ぐ。
・村に迷惑をかけないため、その町で労働を強いられている子ども達のいる施設から子ども達を脱走させると企んでいた。
・多くの子ども達を救出する事には成功したが、多くの非協力的な子ども達は、衛兵に捕まってしまった。だが、女の子や幼い男の子達はこちらに協力的な子が多かった。また、兄弟のいる10代後半の子ども達は、自分や兄の指示に従って子ども達を率いてくれたから、うまく逃走することができた。
・自分達もかなり危険な目にあったが、隠れていた先で大きな地下街に通ずる道を見つけたことでなんとか生還。大事な娘を助ける事に成功。……ただ、旦那さんは帰ってこなかった。衛兵から自分達を逃がすために囮役になって動いてくれた。
その次のページには、旦那さんとの色々な思い出が綴られていた。所々に雫が落ちた跡も見えた。
・不安を募らせていく子ども達に、信じるものを与えるために、子どもを司る女神様の存在を説いた。
・助けた子ども達の内、ホムラという少女はシェスカと同じ神童だった。特徴は燃えるような赤い髪と左目を裂いたような傷。そして、それを隠すために普段は左目を髪で隠している。
・子ども達を兄に託し、シルヴィを連れてこの場所を出る。
最後にシルヴィや色んな人に向けられた手紙を見つけたが、それは俺の見るべきものじゃないと元通りにたたんで手記の間に挟んで手記を閉じた。




