28-11
「ありがとうございます」
客を迎え入れる為の貴賓室のような場所へと案内された俺は、そこまで案内してくれたメイド服の女性にお礼を言った。
「いえ、私は旦那様に申し付けられたことを遂行したまでです。お礼を申し上げられる程のことはしておりません」
その使用人は恭しく頭を下げ、俺達が座っていたソファーの目先にある扉の横に直立不動の状態になった。
ここまで来る間にも多くの使用人とすれ違ったが、どの女性も若い見た目でありながら、綺麗な所作で丁寧な挨拶をしてくる。
メイデンさんばかり見ていて忘れていたが、使用人ってちゃんと家事するんだな……。
(うっ……今はメイデンさんのことを考えるのは無し無し! 今からシルヴィとシェスカの祖父母に会うんだから他の女性のことは考えちゃだめだろ! ……こういう時は別の事、別の事。……そういえばシルヴィとシェスカの祖父母って何してる人なんだっけ?)
何も知らないというのは相手に失礼なのではと思い、待っている間に、使用人の女性に聞いてみることにした。
「失礼ですが、ご当主殿はどのようなお仕事をなさっておられるのですか?」
使用人の女性は、その質問に対して答えるかどうか隣の女性と目を合わせていたが、お互いに頷いた直後、こちらを見て口を開いた。
「旦那様は、食料品や衣服、武器といった輸入品を扱う会社を幾つも設立しており、一切の密輸を行わず、王家からの信頼も厚い御方でございます」
「それはそれは……とても立派な方なんですね」
「立派なんてものじゃありません!! 旦那様も奥様も私のようなその日生きるのにも困っている者を雇い養ってくださる素晴らしい方達なんです! お二人に感謝していない者はこの屋敷にはおりません!!」
いきなりテンションがハイになったことで、食いぎみに話してくるが、その様子がアオイに似ており俺は少しだけ苦手だった。
だが、閉じられていた扉が急に開かれたことで、先程まで食い気味に話していた女性は、瞬時に元の位置に戻って直立不動の構えをし始めた。
その豹変ぶりに言葉を失ってしまうが、俺はすぐに扉から現れた初老の男性と女性に目を向けた。




