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「すいません。うちのシェスカがご迷惑をおかけしませんでしたか?」
いきなり現れた異様な雰囲気を醸し出す黒髪の青年。敵意や殺意は見せないが、その並々ならぬ雰囲気からとても一般人には思えなかった。
「い……いえ、迷惑なんてとんでもありません。とてもかわいらしいお子さんですね……」
「ありがとうございます」
微笑みながら感謝の言葉を伝えてくる彼の姿は爽やかな青年そのものだったが、それでも門番の女性にはわかった。
この男は危険だ、ということに。
「あの……つかぬことをお聞きしますが、この子はあなたの娘さんですか? 随分似ておりませんね……」
警戒を露にし、青年の正体を見破ろうと門番の女性は、その質問をする。
誘拐するつもりだったなら、容赦なんてする気はない。そんな感じの雰囲気を女性は漂わせ始めた。
(なんか誤解されてる気がするな~。ただでさえシルヴィの祖父母に会うってことで緊張してんのに……面倒事を起こしたくないな~)
優真は明らかな敵意を向けられながらも表情を崩すことはなかった。ただ、それはシルヴィとシェスカの前でカッコ悪いところは見せられないという意地があったからで、内心は冷や汗だらだらだった。
「……あの~、なんか誤解されてるみたいですけど、この子は婚約者の実妹です。似てないのは当たり前ですよ」
「そ……そうなんですか!? そ……それは大変申し訳ありませんでした!!」
優真の誤解を解く発言で、こっちに来ていたシルヴィが、その女性に対して頭を下げた。その姿を見て自分の勘違いにようやく気付いた門番の女性は優真達に頭を下げてきた。
優真は別に気を悪くした訳でもないため、その女性の謝罪を素直に受け入れた。むしろ、会ったばかりの子どもを守ろうとする姿に感心していた。
「ねぇねぇお兄ちゃん! おじいちゃんどこ~?」
誤解の件が一段落すると、シェスカがいきなりそんな発言をしてきた。
それを聞いて、どうするか迷っていた俺はその女性に聞いてみることにした。
「すいません。つかぬことをお聞きしますが、バートラムさんという方のご両親がこの辺に住んでいると伺ってきたのですが、どこかご存知ではないですか?」
「バートラムぼっちゃまのですか? それでしたら、この屋敷で間違いないですが……旦那様に何かご用でしょうか?」
(マジか……ここで間違いないんだ。……最悪だよ、こんな豪邸だとは思ってなかったから、普通の格好なんだけど……)
今回は元々、二人のことを紹介するだけだったため、正装はしていない。結婚とかの挨拶とかは、年明けにする予定だったため、この豪邸の雰囲気にあった服は着ていない。
この付近まで送ってくれたハナさんも、夜まで来ないので、着替えることも不可能に近かった。
(……TPOに厳しい人じゃないことを願うか……)
「申し訳ないんですけど、バートラムさんからの紹介で来た雨宮優真と申します。ご当主殿にお会いできないでしょうか?」
「バートラムぼっちゃまの紹介!? し……少々お待ちください!」
そう言った門番の女性は、耳につけていたインカムで俺達の件を連絡し始めた。
・急遽始まった補足説明
文中でシルヴィとシェスカの前でカッコ悪いところは見せられないと書いてますが、当然、ついてきている万里華も傍にいます。
ただ、幼なじみの彼女には既に幾度となくカッコ悪いところを見られているし、傍にいるのが彼女だけだったら絶対そんなこと考えないだろうなと思ったからです。




