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「……理由が知りたい。……昼も少し思っていたけど、どうして俺なんだ? 強いだけで言うなら、パルシアスやネビアとか他にも強い眷族筆頭は多くいたはずだ。……俺である必要はないはずだろ?」
その質問をした瞬間、メイデンの表情に陰りが見えた。
メイデンは「……そう……」と呟いた後、優真の方をいつもの無表情に取り繕った表情で見た。
「……ごめん……今日は……もういい……」
そんな意味深な発言だけを残し、メイデンは脱いだ浴衣を適当に巻いて、この部屋から出ていった。
後に残されたのは、唖然とした表情を誰もいない襖の方に向け続ける優真だけだった。
「…………俺なんか、そんなに傷つけるようなこと言った?」
自分以外の人がいなくなった部屋で、優真は再び眠りにつこうとするが、彼女のことが気になり、結局一睡も出来なかった。
◆ ◆ ◆
メイデンは、自分に与えられた部屋に戻った直後、外に通じる襖をおもいっきり閉めた。
後ろ手で閉めた襖に寄りかかり、銀色の瞳を寂しげに下へと向けた。
自分でも訳がわからなくなってくる。
彼が言った『俺である必要はないはずだろ?』という発言が、自分の胸に刺さる。
確かに彼が言ったとおり、彼である必要はない。
ネビアは論外だが、パルシアスやキュロスといった眷族筆頭で、彼よりも強い人はいたと思う。少なくとも、自分より強い人はいた。
それなのに、この長期間を経て、この眷族の子どもを産みたいと思えた眷族は、彼だけだった。
この世界で人間として生まれ変わり、あの方の眷族となってから、数百年が経っているはずなのにだ。
「……どうしたんだろ……私……」
彼の言うとおり、彼の子どもでなくてもいい。……だがもう、彼以外の子どもなんて考えられない……。
「ふっ……また『チャーム』でもかけられたんじゃないかってくらい彼に心酔してるんだな、我が眷族よ」
その言葉を聞いた瞬間、目を声のした前方に向ける。
そこには2脚の椅子が小型テーブルを挟んだ位置で向かいあっている窓側に近い小さな空間があり、椅子の一つに自分と同じ銀髪の女性が座っており、片手で小さな書物を読んでいた。




