27-17
「ユーマさん!!」
その声でいきなり動き始めた茨に振り落とされた俺は、驚いている場合ではないことを思いだし、崩れた体勢から立ち直り、迫ってくる茨を斬った。
誰がこんなことをしたのかについては、思い至る人物が一人しかいない。
とはいうものの、彼女がそんなことをする理由が見当たらない。むしろ、俺の特殊能力についてよく知っているあの女神が、俺を負けさせるような真似をするのだろうか?
なにか見落としている気がするが、今は目の前に迫りくる無数の茨を対処する方が先だ。
「十華剣式、伍の型、白桜の舞い!!」
一瞬の隙を見つけたことで体勢を直しつつ、刀を握り直し、迫りくる無数の茨を斬っていく。
この隙は、おそらく急に俺がここに現れたのが彼女にとっても衝撃だったからだろう。
だが、その隙も長くは続かない。
迫りくる茨の威力も速度も徐々に上がってきているのが、刀を通じて感じる。
(……これ……さすがにまずくないか?)
攻撃を受け流し始めて10分が経過したのを、視界の隅に映った時計で確認する。
先程から10分しか経っていないというのに、疲労度が異常だ。動きは鈍ってくるし、呼吸がうまく整えられない。休み抜きの怒濤な攻撃に、俺の体がついていけなくなっている。
それがわかっていても、どうすればいいのかが思い浮かばない。
だが、それを考える余裕は受け流すだけでいっぱいいっぱいの俺にはなかった。
それを思い知らされるかのように、俺の腹部を銀色の茨が貫き、再び赤い血が吹き出る。しかし、痛みは死ぬほどのものじゃない。すぐに刀を振って銀色の茨を斬る。
自分の腹部に刺さった茨をなんとか引き抜くが、血の出る痛みを必死に我慢しようとするが、彼女が俺の状態が安定するまで待つ理由はなかった。
「……ガハッ……!?」
鞭のようにしなった数本でまとまった茨による攻撃が、腹部を強打し、その結果、優真の体は後方にある壁に強く打ち付けられた。
「……負けを認めて……」
その声が聞こえた方に顔を向けると、残念そうにこちらを見つめる少女が立っていた。
少女は、ゆっくりと優真の方に歩いていき、銀色の茨で優真の四肢を縛りつける。
「……ご主人様は強い……でも、あの時の方が強かった……手加減してる?」
「……残念だけど、俺の実力は元々こんなもんだよ。メイデンさんやハナさんが買い被ってただけ……」
「……じゃあなんで負けを認めないの?」
「そりゃあ……俺が負けたらメイデンさんとは会えなくなるんだろ? ……せっかく仲良くなれたのに、離れるなんて嫌だから……最後の一手まで、勝ちの目を見逃したくない……」
「……そういうの、悪あがきって言うんだよ? …………もう、ご主人様のカッコ悪いところは……見たくない……」
メイデンが右手を上げると、ばらばらだった銀色の茨が、1本、また1本と束になっていき、巨大な鞭を作りあげる。
「ばいばい……ご主人様……次は『神々の余興』で会おうね……」
その言葉が耳に入った瞬間、優真は諦めたかのように、目を閉じた。
だがーー
「お兄ちゃんをいじめないでーっ!!」
その大きな声が、二人の耳に届いた。優真が目を開くと、そこには、振り下ろされそうになっていた巨大な鞭と、自分の前で両手を広げて立つシェスカの姿があった。




