27-1
そこは家具が散乱した家だった。小さな子どもは体を這いずって、必死に外へ出ようとしているのが見ただけでわかった。
その子どもは、右足から血を出しており、周りの炎と同じ赤い色の血を流していた。
そう、この場所は燃えている。
なんで子どもがこんな場所にいるのかがわからない。……ただ、一つだけ確かなものは、このままだと子どもは火に焼かれて死ぬだろうという結末だけだった。
だが、その子どもの顔は……どうしても見えない。
「助けて……助けてよ……」
涙を流して、必死に助けを求める子どもに、見ているだけの俺は必死に手を伸ばそうとする。
その子を助けたいと必死に願う。
だが、動けない……いや、動かそうと思っても肝心の腕や……足や……体がない。
そう、俺は見ていることしか出来なかった。その凄惨な光景を……。
◆ ◆ ◆
「……ちゃん! お兄ちゃん!!」
誰かが自分の名前を呼んでいるのが聞こえ、優真の意識はゆっくりと現実世界に戻ってくる。
「起きてっ! お兄ちゃんっ!!」
かわいい平手が自分の額をペチペチと鳴らし、意識がようやく覚醒してきた。
目が覚めた優真の視界に映ったのは、泣きそうな顔になっているシェスカだった。
優真は急いで体を起こし、先程の子どもを探すが、そこにはシェスカと横で寝息を立てているファルナの姿しかなかった。
「…………夢か?」
そう呟いた瞬間、浴衣姿のシェスカがいきなり抱きついてきた。
「シェスカ? ……どうした?」
「お兄ちゃん……なんか嫌なことあったの? シェスカがついててあげる! ……だから泣かないで?」
そう言われて気付いた。俺の頬を涙が伝っていることに……。先程の夢で子どもを助けられなかったことが原因ではないことは一目瞭然だ。夢の子どもを助けられなくても誰かが死ぬ訳じゃない。……でも、拭っても涙が止まらない。
何か大事なことの気がする。先程の夢がただの夢ではない気がする。……予知夢? ……明晰夢? 訳がわからなくなるがたった一つわかったことがある。
俺はあの場所を知っている。
……ただ、そこがどこかということまでは思い出せなかった。




