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「り……理由を伺っても?」
本来であれば、高位の神様が言った言葉に問答無用で従うのが常識らしいが、今回ばっかりは理由を聞かなくてはならない気がした。
眷族筆頭の恋路をこんな形で叶えさせるために、女神がでしゃばってくるなんて思っていなかったし、なによりも、万里華から聞いていた印象とだいぶ違うからだ。
マイペースで包容力の高い女神様。そう聞いていたからこそ、そんな女神様がここまでする理由が知りたかった。
「いいよ……僕はね、ユウタン君。ハナちゃんが可愛くて可愛くて仕方ないんだよ。容姿、性格……それに頭がお花畑なところとかも超可愛いんだよ! ……そんなハナちゃんが200年間、ずっと君を待ち続け、傷つき苦しんだのは、僕のせいだ。……だから僕はこれ以上、ハナちゃんに苦しんでほしくないんだよ……」
「……女神様……」
「ハナちゃん。あとは君次第だ。これから先は、婚約者として、ユウタン君の傍に立ち、彼に大切なヒトだと言ってもらえるよう努力していきなさい。安心してくれ。例え君が僕の側を離れても、僕は君の一番の味方だよ」
ハナは、彼女に肩を掴まれて言われた言葉で彼女の決意が伝わってきた。
神にとって、自分の眷族を嫁に出すというのは、簡単なことじゃない。ましてや、眷族筆頭ともなれば、その代わりはそう簡単には見つからないため、ほとんどの神がいい顔をしない。
この話は、彼女にとってメリットの無い話だ。
同盟という関係だって、こんなことをしなくても、二人の仲なのだから既に成り立っている。要するに同盟の話は周りに対しての言い訳に過ぎない。だから、彼女は本来であればこんなことをする必要がない。
つまり彼女は、ハナのためだけに、全てのお膳立てをしてくれたのだ。ハナの思いを成就させるためだけに、彼女は眷族筆頭を手放す覚悟を示したのだ。
「……ありがとう……ございます、女神様……」
涙腺が緩み、涙が頬を伝っていくのを感じながら、ハナは彼女に感謝の思いを伝え、その胸に飛び込んだ。
「……それで? ユウタン君は僕の怒りを買ってでもこの子と婚約するのは嫌かな?」
ハナさんと大地の女神様が涙腺を刺激されそうな抱擁をしてから数分の時が経ち、大地の女神様がこちらに向き直った。
「……いいえ。俺としては、彼女に何の不満もありませんし、大地の女神様とハナさんが俺なんかでよろしいとおっしゃってくださるのでしたら、異論ありません」
「そうか。それは良かった。これからも末長くよろしく頼むよ」
「はい」
俺はそう返事をして、大地の女神様から差し出してきた手を握った。
大地の女神様の後ろではもじもじと可愛い仕草をしているハナさんが頬を赤らめながらこっちを見ていた。
彼女は俺がそちらを見ていると気付くと、恥ずかしそうに口を開いた。
「……ユウタン……私、初めてだから……優しくしてくれると嬉しい、かな……」
「……うん、これからよろしく頼むよ、ハナさん」
そしてこの日、俺とハナさんは婚約者という関係になった。




