4-13
「…………わかった」
最終的に折れたのは、ガルバスだった。
決心した男の覚悟をこれ以上、踏みにじるような真似は出来なかった。
「全員、ここから離脱する! そして、近くにいる子どもを一人担いでくれ。担がない者は、道中のモンスターを俺と共に狩ってもらう!」
「ガルバスの旦那! こんな状況で何を言ってるんですかい? Sランクの化け物相手に、逃げ切れる訳ないじゃないですかい」
「黙って、俺の言う通りにしろ! ユウマの覚悟を無駄にする気かっ!」
ガルバスの言葉は、その場にいた彼らを奮い立たせた。
自分たちよりも若い男が命を張ろうとしている。
それだけで、自分たちがこんなことをしている訳にはいかないと思えたのだ。
彼らは次々と準備していく。子どもを抱き上げる者、剣を構える者、全員、村へ帰ることと、優真への感謝しか、頭にはなかった。
「これをここに置いていく。丸腰で若造をSランクモンスターと戦わせるなんて、このメンバーを預かった者として許されんからな」
ガルバスさんは、俺に刀身が1メートル程ありそうな剣を渡してくれた。
「ありがとう」
「礼を言うのはこっちだ。あの時、婆さんの指令に従って正解だったな。感謝するぜユウマ!」
初めてこの人に小僧ではなく、ちゃんと名前で呼んでもらえた気がする。1対1で話す時は小僧としか呼ばれなかったというのに。なんだかガルバスさんに少しだけ認められたような気がした。
それが少しだけ誇らしかった。
「お兄ちゃん一緒に行こ?」
ガルバスさんと話していると、シェスカが、俺の湿った袖を掴んで引っ張ってきた。
それを見たガルバスさんは皆の下へと去っていった。
シェスカの傍には、シルヴィが立っており、不安そうにしながら、
「……一緒に行きますよね?」
と聞いてきた。
出来ることなら、二人の問いかけに、頷いてやりたかった。
彼女たちと共に、あの村へと帰りたかった。
………でも、それは不可能だった。
せっかく拭ったのに涙が込み上げてくる。
こんな情けない顔、二人に見せたくなかった。
これが最後の機会だと思った俺は、無言でシルヴィに抱きついた。
彼女が困惑しているのが、上気した頬でなんとなくわかった。
「……ごめんな、シルヴィ。君と初めて出会ったあの日、君に酷いことを言ってしまったこと、本当にすまなかったと思ってる。あの日、俺を助けてくれてありがとう、シルヴィ」
泣いている顔を見せたくなかった俺は、彼女の耳元に呟くことしか出来なかった。
俺は、彼女から手を離して、シェスカの目線まで屈んだ。
先程のシルヴィ同様、俺は彼女を抱き寄せる。
「ここでお別れだ。……ごめんな、今度折り紙教えてあげるって約束、守れそうにないや」
俺がそう言って立とうとすると、シェスカは俺の首に手を回してきて離れようとしなくなった。
「やだっ! お兄ちゃんと一緒に行く! ねぇ、一緒に行こ! お兄ちゃんと離ればなれは嫌だよ~」
シェスカは涙を流しながら、俺から離れるのを拒み続けた。




