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「おいパルシアス! いったいどうなってやがる?」
「ふふ~ん。僕は何もしてないし、知らないよ~? ただ、見てなかっただけ~」
バラドゥーマが焦ったようにパルシアスを問い詰めていると、一人の女性がこの世界に君臨した。
エメラルドグリーンの艶やかな長髪に、端正な顔立ち、そしてふくよかな胸を白い布一つで隠した姿。それは万里華が彼女と初めて会った時の姿だった。
その場に現れた女神に対し、意識のない4人以外の全員が目を奪われる。
「跪け」
その短い言葉が辺りに響き渡った瞬間、目を奪われていた全員が彼女に対して片膝をついて頭を垂れた。
「やぁハナちゃん、君のお陰でシルヴィちゃんとユリちゃんの命が助かったよ。もちろんメイデンちゃんもね。君達二人には心から礼を言うよ。ありがとう」
「「もったいないお言葉です」」
女神は、味方となって戦ってくれた二人に礼を言った後、他の者同様、ひざまずいているキュロス達の方へ目を向けた。
「さて、キュロス。君達の役割は理解しているつもりだし、君達の意見は尊重したいと私も思ってはいるけど、さすがに今回の発言だけはいただけない。優真君の地獄行きが決定した場合、そのネビアとかいう奴はどうするつもりだい? 彼は、シェスカとファルナを蹴った罪があるのではないのか?」
「……失礼を承知で言わせていただきますが、そちらの眷族筆頭が既に攻撃した後に起きたのであれば、彼の報復も仕方ないと言えます。手を出した時点でもうどうすることも出来ないのです」
その発言をしたのは、何故か喋ろうとしないキュロスに、疑問を抱いたバラドゥーマだった。
その言葉を聞いた、子どもを司る女神は何故か1通の封筒を取り出し、キュロスの前に投げた。
「……今回の件は霧の女神が自分達の過ちを認めている、としてもか?」
「な……っ!?」
その発言が予想外だったのか、バラドゥーマだけが驚いたような顔を見せていた。
キュロスは手紙を読んで、眉をピクリと動かした程度で、パルシアスは少しも驚いた素振りを見せなかった。
「そもそも事の発端は、そこのネビアが私達の乗っている馬車を襲ったことが原因だ。その対処に私の眷族筆頭が動いたことになんか文句でもあるのか?」
「いえ。その情報は私の耳に入っておりませんで、誤った判断をしてしまうところでした。今回の件では、子どもを司る女神様の眷族筆頭アマミヤユウマ殿は、あくまで主神を襲った悪党を討伐するために動いた。これが、霧の女神様も承知のことであるならば、アマミヤユウマ殿、並びに、そちらの白髪の少女は無罪とする。二人とも異論はないな?」
「……異論? ある訳ないだろうが! 今回は暴走したネビアを含めた霧の眷族どもが全面的に悪い。7位の地位も剥奪で地獄行き決定だろ!」
手紙をキュロスに渡されて、それを読み終えたバラドゥーマは、怒りのこもった声でそう言った。
知らなかったとはいえ、後少しで、格下のネビアなんかに一杯食わされそうだったという事実が気にくわなかったのだろうと、彼らをよく知るハナはそう判断した。
「僕もそれでいいと思うよ~」
先程から黙っていたパルシアスがそう言った瞬間、倒れているネビアの下に黒い歪みが生まれ、そのまま何処かへと消してしまった。
こうして霧の女神の眷族達との戦いは幕を閉じた。




