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自分だって怖い。でも、自分より幼いユリスティナが怖がっているなら、自分の恐怖は彼女に伝わらないようにしなくてはならない。
「シルシル~、そのままじっとしててね~」
その声が聞こえた瞬間、地面が揺れ、目の前にいたハナの後ろ姿が徐々に下がっていくようにみえた。
(いや違う……これってもしかして私達が上がってるの?)
見渡すと、樹木の緑が近くにあり、自分の足下には、手のような形をしたものがあった。よく見てみるとそれは木で出来ていた。
「ちょっと危険だからそこでおとなしく待っててよ。すぐに終わらせるから」
もはや彼女の姿は見えないが、その声で真下にいることがわかった。
「私の親友に手を出した罪は重いから。……私の怒りは大地の怒り、全てを引きずり込め! 【震天覇獄】!!」
その声が聞こえてきた直後、ディガルバ族の雄々しい男達の叫び声が聞こえてくる。何がなんだかわからないまま、ただただ、悲痛の叫びだけが耳に届いてくる。
そして数分後、自分達が乗ってる木の手が徐々に地面へと近付いていくのを揺れる床で知った。
地面に降り立つと、シルヴィとユリスティナは息を飲んだ。
ここら一帯の霧がなぜか晴れており、ハナ以外の目に見える全員が首より下を地面に埋められ、動けなくなっていた。
「こ……これって死んでるのですか?」
それを見て、死んでいるのかと思ったユリスティナが小さく悲鳴をあげるが、ハナはその質問に首を振った。
「安心して、まだ殺してないよ。気絶させてるだけだよ。こんなところで殺しちゃったらユウタンやシルシルに嫌われちゃうからね。そこの人は初めましてだよね? 私はハナ。大地の女神の眷族筆頭をしている者です。よろしくね」
そう答えた後、ハナはシルヴィに支えられている少女に向かって自己紹介をし始めた。その正体を知ったことで、ユリスティナの顔に驚いた様子がうかがえた。
「あ……あなたが、大地の女神様の眷族……お初にお目にかかります。わたくしは、パルテマス帝国第二皇女で、ユウマ様の婚約者になりましたユリスティナ・カルテス・パルテマスと申します。ハナ様のお話はシルヴィお姉様からお聞きしております」
「へ~ユウタンの~! ユウタン、モッテモテだな~。こんなお人形さんみたいに可愛い女の子の心まで射止めちゃうなんて、さすが私の運命の人だよ~。……おっと、こんなところで話している場合じゃないよね。早速ユウタンのところに行こ~!」
「ちょ……ちょっと待ってください!」
「ん~?」
ハナは張り切って前進し始めるが、そっちは青い光が出た方向ではなかった。
てっきりあそこにいるものだと思っていたシルヴィはハナを呼び止めてしまった。
「そちらは光の発していた場所と違いますが……あちらに行かなくても大丈夫なのですか?」
「あっちにはいないよ~。ここはネビアが展開した霧の中、視覚はあてにならないよ。この空間でさっきまで光ってた場所を目指しても、迷うだけなんだよね~」
「そ……そうなんですか……」
「なに露骨に落ちこんでんの! 私を誰だと思ってるの? 大地の女神様の眷族なんだよ? 大地に接しているだけでユウタン達の居場所なんか丸わかりだよ。ほらついてきて」
そう言ったハナは、シルヴィに手を差しだしてきた。
握られた手が、自分に生き残ったという安堵感を与えてくれたことで、シルヴィは目から涙をこぼしながら、彼女と共に歩き始めた。




