24-12
『ファルナ、貴様は我輩の眷族として相応しくない。貴様に貸し与えていた力は返してもらうぞ』
麒麟様からそう伝えられたのは、半年前だった。
人生の終わりだと思った。
でも麒麟様は間違っていない。全部、麒麟様の期待に添えなかった僕が悪いんだ。
海を隔てた南大陸。そこの西にある辺境の地で僕らは暮らしていた。獲物も豊富で、広大な大地、空気の澄んだ僕の故郷。本当にいい場所だった。
南大陸の仲間達も、僕に優しく接してくれた。
でも、僕が特別だから、優しく接してはくれても、親しくはなれなかった。
そんなある日、僕は村の外に冒険してみたくなった。
でもそれが悪夢の始まりだった。
ばれたら怒られると思って、黙って向かった。
ばれるかもしれないというドキドキと、まだ見ぬ素晴らしい世界を期待したわくわく。当時の僕はそんなことしか考えてなかった。
初めて出た村の外は、僕にとって新鮮な世界だった。
ばれないようにフードやローブで、耳と尻尾を隠した。
色々と見て回って、帰るのが惜しくなったけど、1日が限界の僕にとって、帰らない訳にはいかなかった。
神獣の守護効果は、1日しかもたないのだ。
その帰り道、一人の男性がモンスターに襲われてるのを目撃した。僕は咄嗟に神獣化して、その男性に襲いかかっているモンスターを撃退した。
怯える男性を宥めるために人の姿に戻った。
その人は初めて会った神獣族に興味を持ち、何度も感謝の言葉を伝えてきた。
外の人間と関わることは禁じられている。
それでも、その男性がする話は面白くて、色々なことを話してしまった。
初めて友達と言えるような存在に出会えた。そう……思っていた。
いつの間にか眠っており、目が覚めた時には、檻の中に枷をつけられた状態で入れられていた。
外には友人だと思っていた男が立っていた。ここは何処なのかと聞くと、僕に睡眠薬を盛って、僕を捕まえたこと、僕の村に行き、仲間を大量に捕らえ、奴隷として売り飛ばしたことを誇らしげに伝えてきた。
そして、目玉商品の僕は、これから売り出されることを知った。
それが初めて暴走した時だった。
次に意識を取り戻したのは、壊滅した村の前だった。
僕は、頭痛に頭を悩ませながら村の中に入っていく。
「おかえりなさい」
優しい笑顔で僕を迎え入れてくれる村の仲間達……だがそれは、過去の話だった。
焼け焦げた家。かつて仲間だった者達の亡骸。
僕が外にさえ行こうとしなければ、誰も死ななかった。
僕が人間と話さなければ、仲間が捕まることはなかった。
その日から僕は三日三晩泣き続け、泣き疲れて眠った夢の中で麒麟様から、眷族の資格を剥奪され、人間の言葉を話すことが出来なくなった。
「全部……僕が悪い。人間を信じてしまった……僕が悪い」
◆ ◆ ◆
「……だから、僕をそんな地獄みたいな環境から救ってくれたシェスカを……皆を……お前のような奴に殺させられないんだ!!!」
低いうなり声を発し、その言葉を紡ぐ白き獣は倒れた少女の前に四足で立ち、男を鋭い目で睨み付けた。
「……神獣族の白虎か……」
威圧感を発している体長2メートル程の獣を、ネビアは憎々しげに見始める。
麒麟は4体の神獣が信仰する神で、ネビアが信仰する霧の女神よりも少し立場が上になる。麒麟の眷族は4体の神獣であり、その神獣の中でも白虎と青龍は戦闘特化の化け物で、ネビアも簡単に勝てるような相手ではない。
……だが、臆することはない。
自分は霧の中にいれば、無敵なのだから……。




