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「な……何を言っているんだい? さっき君があっちだって……」

「わかんない。でも今はそっち」

 不安そうな表情をしてはいても、その少女は迷いなく正確な位置を指差した。確かに自分の特殊能力【迷いの霧】は、発動している。いつものように、自分以外の全てを迷わせる霧だ。そう簡単に見破れる筈がない。そう確信していたのに、目の前でそれを打ち破られた。


「おじさんに教えたら、変になった。……おじさん何したの?」

 シェスカは繋いでいた手を怒ったように振りほどくと、疑わしいものでも見るような目を、ネビアに向け始めた。

「私はただ……君を心配して」

 そう言いながら、シェスカの手を掴もうとするが、それさえも避けられてしまう。

「お兄ちゃんに……知らない人についてっちゃ駄目って言われてるから、おじさん近付かないで!」

 その言葉を聞いた瞬間、ネビアは苛ついたように舌打ちした。

「ちっ……何かしらの特殊能力を持っているのは知っていたが……まさか、探知系の能力か? せっかく奴らの餌にしてやろうと思ったが……計画変更だな」

 そう告げた瞬間、シェスカの軽い体は簡単に吹き飛んだ。

 先程までいた地点には、シェスカを蹴りあげた男が立っている。

「面倒だが、私がやろう。全ての発端をこの手で潰すのも悪くないかもな……」


「なに気絶なんかしてんだよ?」

 蹴られて簡単に気を失ったシェスカをネビアは蹴って目覚めさせる。

「……コホッ、コホッ……おじさん何で……何でシェスカを蹴るの? シェスカのこと……嫌いなの?」

「ああ、嫌いだよ。……だいたい、全てはお前のようなクソガキを眷族にするという言葉から始まったのだ。お前さえいなければ、ミーちゃんだって死なずに済み、女神様だってあんなに悲しい顔を見せなかった筈だ! 全部! 全部! 全部! 全部お前が悪い!!! お前さえ生まれてこなければ! お前さえ生きていなければこんなことにさえ、ならなかったんだ!」

 冷静さを欠いた男は何度も何度も踞るシェスカを踏みつける。一思いに殺す気はない。苦しませ、痛めつけて、最終的に無惨な死をこいつに与えなければ、気が済まない。


(痛い……痛いよ……。お兄ちゃん…………助けて……)

 シェスカがどんなに助けを求めても、それが声に出ることはなかった。

「シェスカに手を出すなーっ!!」

 その言葉が今にも気を失いそうなシェスカにも聞こえた直後、自分を蹴っていた男がよろめきながら後退ったのが薄れていく視界に映った。

 そして、次に映ったのは、白い髪の猫耳少女だった。


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