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「…………は?」
その発言に、俺は一瞬自分の耳が信用できなくなってしまった。
だが、この状況もあいまって、聞き間違いの類いではないと思えてきた。
「……冗談で言ってるのなら質がわるいぞ?」
「冗談? これは私の敬愛する女神様が可愛がっていたミーちゃんことミストヘルトータスを殺された復讐……本当は貴方に死んでいただこうと思っていたのですが、他の神の眷族に手を出すのは面倒なことになるため、貴方の大切な者を殺るしかないのですよ」
「……俺がそれをみすみす許すと?」
「止めたければ止めればいい。私は貴方の仲間を殺す敵です。止めたければ、私を殺るしかないですよ?」
「言質取ったからな?」
「ええ、構いませんよ?」
怒りで狂いそうになりながら俺は鞘にしまっていた剣を引き抜き、彼に向けて構えた。
「十華剣式、惨の型、曼珠沙華の舞い!!!」
そう叫んだ俺は、間合いに存在するネビアの首を刈り取るために刀を振るった。
惨の型、曼珠沙華の舞いは相手の首を斬る技だった。
この技はこの世界に来て作った技だ。
妄想で作った技などではなく、モンスターとの戦いで作った技の一つ。
一瞬で自分の間合いに持っていき、相手が認識出来ない速度で首を刈り取る。それは眷族として覚醒した今だからこそ、それを実現出来る力を得て、必殺の型になる……筈だった。
しかし、優真が放った曼珠沙華の舞いは空を斬った。
直前どころか斬った直後でさえ、ネビアという眷族は反応出来ていないように見えたものの、モンスター達に使った時のように、首を斬った感触がまったくしなかった。
自分を鼓舞した怒りが、一つの疑問によって、違和感に支配されていく。
(……いったい……いつの間にそこへ移動したんだ?)
自分が斬った男は首から血を流すどころか、にやけ顔を作りながら、先程よりも1メートル程後方にいた。
「おやおや? そんな場所を斬って何がしたいのですか?」
「……特殊能力の類いか?」
「ご名答! ですが、わざわざ教えるようなバカな真似はしませんがね。では、貴方には相応しい相手を用意致しましたので、貴方はそこでお仲間が全滅するまでゆっくりしていてください」
「待てっ!!」
優真は再び大地を蹴って、ネビアに斬りかかるが、ネビアはその姿を消した。
「くそっ!!」
再び空を斬り、優真は着地した場所で悪態をつく。
「どうする! あいつの言葉が本当ならまずいことになる! 早く皆のもとに戻らないと! まずい、まずい、まずい、まずい!!」
その時、獣のうなり声が焦っている優真の耳に聞こえてきた。
優真が視線をそちらに向けると、多数のモンスターがいるような気がした。ただ、霧のせいでモンスターを視認することは出来なかった。
「てめぇら相手に時間かけてる場合じゃねぇんだよ……」
その言葉を最後に優真は見えないモンスター達を殲滅する為、手に持つ刀を振るい始めた。




