24-4
その声の主は、不意討ちを仕掛ける訳でもなく堂々と近付いてきた。
木すらも覆い隠す霧が立ち込めているにも関わらず、その存在を俺は何故か認知できた。
白い髪に眼鏡をかけた青年。
クールなインテリという印象を抱いた青年は白いマントを纏っている。
「君が件の黒髪か……ようやく君と出会えることが出来たよ」
相手は俺のことを知っている様子だったが、俺には彼が何者かもわからなかった。
「……どちら様ですか?」
「……私が何者かもわかっていないのか? 本当に苛つかせてくれる男だな、君は」
(……いや、勝手に苛つかれても困るんだけど……)
「まぁいい。オーラは隠しているのだから、無能に気付けるはずもないか」
(……なんかいちいち癪に触る男だな……というかオーラを隠してるって言った? ……てことはもしかして……)
「無能に教えるのはあまりいい気分ではないが、もうすぐ死ぬのだから冥土の土産にでもしておけ。私の名はネビア。S級冒険者序列第7位で、霧の女神様の眷族筆頭を務めている者です」
(眷族筆頭……しかも今度は霧の女神…………霧の女神っていうと数ヵ月前にシルヴィ達を襲ったミストヘルトータスの飼い主だったか……)
あの時は何度も死にそうな目にあってるから、本来であれば、霧の女神とその眷族には、怒りしかない。だが、それでも挨拶をされて無視するというのは、保育士を目指す自分としては失礼に値する。
「……俺は雨宮優真。最近、子どもを司る女神様の眷族になった者です。……それで俺に何の用でしょうか?」
俺が眷族だと名乗ると、ネビアと名乗った男は驚いたと言わんばかりの表情を見せる。
「子どもを司る女神……例の神になったばかりの幼女神ですか……眷族となるとめんどくさいですね。……なら、計画変更ですかね」
いきなり考え込む仕草を見せる男に俺はかなり苛ついていた。
嫌な予感がおさまらないのだ。皆が消えて、この場に孤立させられたすぐ後に出てきたこいつ。
他の皆と連絡が取れないのは明らかにこの霧の女神の眷族筆頭が絡んでいるだろう。
しかも、こいつは俺が名乗る前に、確かにこう言った。
もうすぐ死ぬとか冥土の土産とか、俺に敵意丸出しな発言しかしていない。
俺が彼に対してかなり警戒していると、ネビアと名乗った男は、考える仕草を辞めて、こちらを見た。
「……では始めるとしますか。子どもを司る女神の眷族よ。これより貴方の同乗者、メイデン以外の全員は私の配下によって惨殺させていただきます」




