23-1
木が生い茂る森、そこに向かって走る一台の馬車があった。
「おいあんちゃん達、おいらが送れるのはこごまでだ。こごがらざぎはあんちゃん達だげでいっでぐれ」
「ちっ、金払ってんだから素直に入れや糞じじい!」
「そんだら、こごがらひぎがえずんど! どうぜじぬんだ! 脅されだっでいぐもんか!」
馬車の御者台で手綱を握っていた老人は、森の入り口でその馬車を止めた。
「ちっ、しゃあねぇなぁ! 行くぞ!!」
「「はいリーダー」」
柄の悪い3人の冒険者が、馬車を降りると、老人から声をかけられた。
「ほんどうに行くんか? ごのままひぎがえじだほうがええんじゃないか?」
「黙れヘタレじじい! こっちはもう金がねぇから、こういう金のいい依頼を受けなきゃ生きていけねぇんだよ!」
「ぜっがく、心配してやっだのに、もうじらん! かっでにくたばっちまえ!」
怒った老人はそう言って、馬車を引き返して行ってしまった。
「ほ……本当に行くのか?」
「あ~ん? 当たり前だろぉ! 言っただろ? 金の宛がねぇんだよ!」
そう言った男だって本当なら今すぐにでも引き返したかった。
霧が立ち込めたその森は、まさに魔の巣窟と表現するのに相応しい雰囲気を醸し出していた。
(だいたい、あの黒髪の冒険者さえ見失わなければ、こんな危険な依頼を受けずに済んだってのによ!)
男は再び舌打ちしてから、二人の仲間を連れて森へと足を踏み入れた。
◆ ◆ ◆
「ご主人様、また何者かが、このスティルマ大森林に進入しました。いかがいたしましょう?」
椅子に座りながら頬杖をついている眼鏡をかけた白髪の若い男に、小麦色の逞しい体つきをした男が跪きながら報告した。
「う~ん、見た目は?」
「3人とも茶髪の若い男性でした」
「ふ~ん。黒髪じゃないんなら、君達が食べちゃっていいよ」
「ありがたき幸せ」
そう言った体格のいい小麦色の男性は頭を垂れ、姿を消した。
「早く来い。黒髪の男……今度は、私がお前を殺してやる……!!」




