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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
21章:実習生、家族からの手紙を読む
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21-9


 父さんの死んだ日を思い出していると、頭を急に撫でられた。

 その時、ひとしずくの涙が俺の頬を伝って落ちた。

 いつの間にか涙を流していたようで、彼女に慰められているのが、無性に恥ずかしくなって、無意識に流れていた涙を急いで拭った。

「ごめん。ちょっと目から汗が出ちゃったよ」

「ふふ……別に恥ずかしがらなくてもいいのに……別にそれくらいで優真のことを笑ったりしないよ。私だって優真が死んじゃった時は、人目も憚らずに大声出して泣いちゃったんだしさ」

「う~ん。それはありがたいけど、好きな人の前では格好つけたがるのが男ってやつだからさ。……っていうか、自分が死んで泣いてくれたというのを聞くと少し申し訳なくなるな……」

「だったらもう死なないでよ? いくら眷族でも死ぬ時は死ぬんだから……今度死んだりしたら、私も怒るからね!」

「……別に死にたくて死んだ訳じゃないんだけど……」

「それもそっか。じゃあ死なないように気をつけてね。という訳で次のお手紙いってみよ~!」

「……わかってるよ……今度はお前を置いてはいかないさ……」

 最後の言葉は、彼女に聞こえないよう小さい声で呟いた。


 ◆ ◆ ◆


「ねぇねぇ! 次はどっちを読んでほしい?」

「まぁ、好きな方を読めば? ちなみに由美からの手紙は3枚ぶんあるから、先に母さんからの手紙を読んだ方が得策だと思う」

「そっか。なら優真のオススメを見よう。おばさんは優真になんて書いたん………………ねぇ、おばさんって優真が生きてると勘違いでもしてんの? 『門限破ってるんだから早く帰ってきなさい』って書かれてるんだけど」

「そうらしいね。由美からの手紙曰く、警察にも行方不明の捜索届け出したらしいよ。なんでも俺が死んだと聞いた瞬間、パニックになるんだってさ……知らなかったの?」

「……まぁ、確かにおばさんのところに報告した時は悲鳴をあげて気絶してたよ。でも、次の日は女神様に会って手紙を渡した後、無理言って天界へと向かったから、あんまり詳しくは知らないんだよね……」

「……そっか……。まぁ、俺が言うのもなんだけどさ……少しくらい立ち直ってて欲しいかな。女手一つで由美と俺を育ててくれたのに……こんな形で悲しませるなんて俺はかなりの親不孝もんだよな……」

 せめて……せめて、稼いだお金で旅行券でもプレゼントしてあげたかったと今でも思う。

 別れの言葉すら言えなかった。……傍にいた時は鬱陶しいとか、口うるさいとか、酷いことを何度も思った。……いらいらしている時ほど、母さんの言葉は胸に刺さって、つい反発してしまう。……だから、この手紙を初めて読んだ時は、一人で一晩中涙を流した。

 この手紙に書かれている一つ一つの文字が、言葉が、俺を心配してくれていることが、初めてわかったから……。

 ……せめて、最後に感謝の言葉くらい送りたかった。


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