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20-3


 メイデンさんから手渡された手紙の裏には、鉄の神(てっちゃん)より、と書かれていた。

 この神様、自分のことてっちゃんとか呼んでるのかよといつもの調子で言いそうになったが、眷族の前で言うのは流石の俺でもまずいということだけはわかった。

「と……とりあえず、客人を立たせたままというのは、あまり気が乗らないし、中に案内するよ」

「……ん……」

 メイデンさんは、靴を脱ぎ、俺の後に続いてリビングに入った。


「ええっ!?」

 メイデンさんの姿を見たシルヴィが、驚愕の声を上げた。

 見知らぬ女性がいきなり部屋に入ってきたら、驚くのも無理はないだろう。いや、正確には一度見てはいるのだろうが、どういう人なのかは説明していなかったはずだ。そんな訳で俺はシルヴィにメイデンさんを紹介した。

「彼女は、鉄の女神様の眷族筆頭という役職についているメイデンさん。ガイベラスっていう裏切り者を捕まえるために、鉄の女神様が助っ人として遣わせた方だ。機嫌を損ねさせると俺が串刺しにされるから、丁重にもてなしてね」

 最後は冗談のつもりで言ったのだが、シルヴィは顔を真っ青にして何度も頷き始めた。

「わ……わかりました! ユーマさんの婚約者として恥じない働きをして見せます! ……ただ……」

「ただ?」

 俺がそう聞くと、彼女は俺の傍まで近寄り、メイデンさんに聞こえないように耳打ちしてきた。

「……何故あの方はメイド服なのでしょうか?」

「……それは俺も思っていたことだけど、あんまり突っ込まない方がいいかもな」

「そ……そうなんですね。とりあえずお茶を御用意致します」

「よろしく頼むよ」

 彼女にあわせて声を潜めながら、俺は彼女にそうお願いした。


「適当に寛いでくれていいから」

 俺がそう言うと、彼女は女神が勝手に設置した二人用のソファーに座った。そこに座られては、俺がテーブル席に行くのもおかしいと思う訳で、俺は、その向かいにあるソファーに座った。


「……なんでそんなに離れて座る? ……こっちでも大丈夫」

 俺が向かいのソファーに腰をかけた瞬間、彼女がそう聞いてきた。

 怒っているのか、それとも不機嫌なのか。無表情過ぎて何考えてるかが、相変わらずわからない。

 前回の戦いで少しは察せるようになれたと思っていたが、どうやら気のせいみたいだ。

「いや、客人の隣に座るのはいかんと勝手に思ってるだけだから気にしなくていいよ」

「……わかった」

 そう言ったメイデンさんはソファーから立ち上がると、俺が座っている一人用のソファーに座ってきた。

「……ねぇ……話聞いてた? さっき、わかったって返事された気がするんだけど」

「……うん」

「じゃあなんで隣に座るの?」

「ご主人様が私の隣に座るのがよくない……なら私が座る……だめ?」

 相変わらず感情の読めないような顔でこっちを見てくる少女は、その辺を譲る気はない様子だった。

 とはいえ、強引に突っぱねるのは、命に関わりそうなため、俺は諦めて二人用のソファーに座り直した。

 当然のようにその隣に座るメイデンさんを見て、ため息を吐くのであった。


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