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「……それって今じゃなきゃ駄目?」
恐る恐る聞くと、万里華は分かりやすく溜め息を吐いた。
「今回だけは駄目。……確かにあの手紙は結婚してとかそういう内容じゃなかった。……自分の想いを二度と会えないと思っていた優真に向けて書いたものだしね。でも、気持ちは今でも変わらない……ううん、もっと強くなったの。だから改めてちゃんと言うから。優真、私を貴方のお嫁さんにしてください」
完全に逃げ場を塞がれた気分だった。
「待て! 少し考えさせろ!」
「駄目。優真は余計なことを考えすぎるもの。難しく考えなくていい。優真は私達のことが好きかどうかで決めてくれればいいの。優真は私達のこと……嫌い?」
「……いだろ……」
「えっ? ……今なんて?」
「嫌いな訳ないだろ! 万里華に関しては、中学の時から好きだったんだぞ! いつもそばにいて、俺と同じ大学に進むなんて聞いた時は心から嬉しかったし、手紙を読んだ時は一歩踏み出せなかったことを後悔したほどだよ! それにユリスティナだって、もう美少女過ぎるうえに、性格まで可愛いんだぞ! 二人を嫌う理由が俺にはないんだから嫌いな訳がないだろ!! でも俺には…………このためか……」
その時、俺は女神の意図に気付いて、隣でこの事態を見ている女神に視線を向けた。
「やっと本当の理由に気付いたか~」
女神は優真の方を見上げながらニヤニヤしている。
「あんたが万里華と共に来たことを考えれば、あり得ない話じゃないよな? あんた、万里華と俺を結ばせるために、この計画を考えつきやがったな?」
「まぁねぇ。別にあのとき話した理由も嘘じゃないんだよ? ただ、かあ……大地の女神と話した時に、ハナちゃんのことも聞いてね。シルヴィちゃんだけだったら、数十年我慢すればいいと思ってたんだけど、ハナちゃん相手じゃそうもいかないだろ? だからせっかくなら、皆で仲良く結婚してもらおうと思ってね。今回の計画を思いついたんだ」
「……そういうことね」
納得したが、納得できなかった。
もう色々と予定外なことが起きすぎて、頭が混乱してきた。
だいたい、好きかどうかで決めるなんて、本気で告白してくれている彼女達に失礼なんじゃないかと思う。
「……万里華」
「何?」
「手紙の告白は素直に嬉しかった。でもあの時はもう、二度と万里華に会えないと思ってたから、万里華のことは完全に諦めていたんだ。だから、再び会えたことも、今の告白もすごく嬉しい。……ただ、俺はあの頃の俺とは違う。シルヴィという心に決めた人だっている。それでもいいのか?」
「何言ってんのよ。その程度で諦められるなら、こんなタイミングで告白なんかしないよ」
「そうか…………ユリスティナ」
「ふぁい!!」
「俺はユリスティナのことを全然知らない。どんなものが好きで、どんなものが嫌いかとか、全然知らないんだよ? それにユリスティナなら、もっといい人見つけられるんじゃない?」
「いいえ。わたくしは、ユウマ様以外の相手に靡くようなことはありません。もし、ユウマ様が拒まれるのでしたら、わたくしは一生一人で生きていく覚悟もあります」
二人の覚悟を知った俺は、シルヴィの方を見た。
シルヴィは、俺が見ていることに気付き、微笑んできた。
その姿を見て、決めた。
「万里華、ユリスティナ、俺は二人が魅力的な女性だということは知ってるけど、恋愛感情のようなものを抱いてはいなかった……」
その言葉で二人の表情が一瞬くもったように見えたが、気にせず続けた。
「……でも、それでも少しずつ、二人を好きになっていこうと思う。少しずつ関係が進展していければいいなと思う。こんな俺でもいいというのなら……どうかよろしくお願いします」
「…………はい! ふつつか者ではありますが、これからよろしくお願いします、ユウマ様!」
「……ありがとう優真。私……こっちに来て良かった……」
二人は俺の答えを聞いた瞬間、目から涙を流しつつも、笑顔でそう言ってきた。
こうして、万里華とユリスティナが、婚約者になった。




