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「今なんとおっしゃいました!?」
その意外すぎる内容に優真は自分の聞いた内容が聞き間違いなんじゃないかと思えてきた。
だが、優真の聞き間違いではなかった。
「アマミヤユウマ殿、貴公に娘のユリスティナをもらっていただきたい」
堂々と言ってきたパルテマス皇帝の姿に、優真は何か裏があるんじゃないかと思えてきた。
「まさかとは思うけど、俺の力を今後も借り続けるとかいう下らない理由のために、ユリスティナを差し出すとかじゃないよな?」
先程まで意識して努めていた敬語が使えなくなってしまうくらい意外過ぎる内容に、ついそんな質問をしてしまうが、皇帝は顔色を変えもしなかった。
むしろ、その反応を楽しんでいるようにも見えた。
「そんな考えはない。貴族の地位や褒賞金は受け取って貰おうとは思っておったが、ユリスティナを貴公にもらっていただきたいのはそういう目的があったからではない」
「……じゃあ、どんな目的だよ……」
「ユウマ様!!」
優真がその理由を皇帝に聞こうとすると、正面に座っていたユリスティナがいきなり立ち上がった。その行動に何事かと思い、優真はそちらの方に驚いたとでも言いたげな顔を向けた。
「な……何?」
ユリスティナへそう聞くと、彼女は小さく深呼吸を何度かした後、意を決したように、優真を見つめる。
「初めてお会いした時からお慕いしておりました。わたくしをユウマ様のお傍においてください!」
ユリスティナのいきなり過ぎる発言に、優真の頭は軽くパニックを起こすが、赤くなったユリスティナの表情を見て、このまま、勢いに流されるのは良くない結果を生むと思った。
いくら恋愛感情に疎い優真でもここまで状況が揃えば、さすがにわかる。
「……一応聞いとくけど、意味わかってて聞いてるんだよね? 俺にはシルヴィという心に決めた大切な人がいるよ?」
「それでも、わたくしはユウマ様と共に生きていきたいのです! あの日、ユウマ様が颯爽と助けてくださったあの日から、寝ても覚めてもユウマ様のことばかり考えてしまうようになったのです。だから、どうかお願いします!!」
顔を下げて、手を伸ばしてくるユリスティナ。その手は小刻みに震えており、かなり勇気を出しているということが伝わってくる。
「ちなみに言っておくが、ユリスティナはお父様にお前のところに行きたいと言っただけで、さっきの発言は強制させたかった訳じゃないんだ。むしろ、相手に婚約者がいるってことで、私達は反対してたんだ。そういう理由もあってお前を試したんだよ」
「……要するに、俺は皇女様の婚約者候補にされたって訳ですか……わかりました。要するに俺は純粋に彼女を見て判断すればいいんですね?」
「お……お願いします!」
頭を下げたまま、震えた声でそう言ってくるユリスティナの姿を見て、どうすればいいのかわからなくなった。
ユリスティナのことは嫌いじゃないんだが……まだ彼女は若すぎる。
16歳のホムラよりも若い14歳の少女だ。結婚する年齢とか色々大丈夫なのかとか不安になってくる。
「あのさ……」
優真が迷っていると、女神の隣に座る万里華が真剣な表情を見せながら手を軽く上げていた。
その発言に全員の視線が万里華に集まる。
「私は半年前に告白してるんだけど、その答えはユリスティナちゃんより先に貰ってもいいかな?」
その言葉を聞いた瞬間、ユリスティナに答えるはずだった内容が全て綺麗さっぱり塵となって消えた。




