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「優真、教育を受けさせる権利はどうするの? ここには教師なんていないし……そこら辺はどう考えてるの?」
万里華の質問は、皇帝が悩んでいるタイミングでされたものだった。
「そこら辺も抜かりない。バートラムさんはチャイル皇国で、教育者の資格を持っているうえに、チャイル皇国ではバートラムさんのような教師が数多くいる。教育者は育成するか、その国と協力すればいい」
チャイル皇国はシルヴィの母親が産まれた国だ。そして、子どもを司る女神を国教にしている国で、バートラムさん曰く、他の国と違って子どもを無理に働かせず、逆に教育を受けさせる体制を取っている国だった。そして、他国から嫌われている国でもあった。
「ふ~ん。ちゃんと考えてたんだ……」
「まぁね、どのような教育を施すかは、皇帝である貴方の裁量にお任せ致しますが、当然、私達が怒りを抱くような内容でしたら、文句を言いにきますから」
その言葉を告げた後、いつの間にかユリスティナが参戦していた家族会議が終わったらしく、皇帝がこちらに顔を向けた。
「…………もしも、もしもだ。余がその条件を飲まないと言ったらどうするのだ?」
「まぁ、この国に見切りをつけるかもしれませんね。多くの子ども達を連れて、国境を抜け、隣国のチャイル皇国なら、受け入れてくれそうですし、このまま苦しんでいる子ども達を見捨てるのは辛いので……」
優真は相手に悟らせないように、笑顔を一切崩さなかったが、内心では結構焦っていた。
日本では常識だったため、子どもに教育を受けさせるのは楽なものだと思っていた。
しかし、予想以上に抵抗してくる。この国の未来を第一にではなく、国の今を見ているこの皇帝と王子をどう説得させるかが思い浮かばなかった。
(今の言葉はまずったな~。こんなのほとんど脅しじゃないか……。印象は大事だと思っていたから、しっかりとプレゼン考えてきたのに、それに到達する前に交渉決裂してしまいそうだ……)
そんな後ろ向きなことばかり考えている時だった。
下を向いていたパルテマス皇帝がいきなり高笑いを始めたのだ。それに合わせるように、彼の隣に座っていたフィリップも笑い始めた。
いきなり何事かと思い、周りを警戒しながら、笑い続ける二人を見る。
「いや、すまない。先程までのはほとんど冗談だ。私達はその条件を聞いた時から飲む気だったよ」
「…………は? いったいなんで?」
「君が信用に足る者かを見たかったのと、思い通りにことが進まなかった時、暴力で解決しようとしないかを見てみたかったのだ」
はぁ? くっそ、こいつら女神と似た性格か! 自分の立場利用して、配下を遊び道具にすることが楽しみなのか?
(……隣でめちゃくちゃ睨んでくるけど、気にしない気にしない。まぁ、要するに少しは信用されたということだろう。本当は物凄く蹴りたいけど、相手皇帝だし、我慢するか……)
「……という訳で、娘のユリスティナをもらってくれないか?」
………………ふぇっ!?




