19-1
その日は、雲一つない晴天だった。
二日前に自分達が住む国の城が攻められたというのに、馬車の窓から見えた人々はまるで何事もなかったかのように、歩いていた。
「ねぇねぇお兄ちゃん! あれがシェスカ達が向かってる所?」
窓から顔を出していたシェスカが、その小さな指を一つの建物に向ける。
それはネットで見たことがある海外の城によく似た立派な城だった。
その楽しそうな少女に、俺は頷く。
「シェスカちゃん、そんなに乗り出してると、落ちて怪我しちゃうよ?」
「え~、シェスカ落ちないから平気だもん!」
万里華の忠告に自信満々に大丈夫宣言をするシェスカ。
そんなシェスカをファルナが面白半分で揺らして、言い合いをし始めるのを静かに見ながら、優真は眠いのを我慢していた。
これから出会うのは帝国の王族だ。前回会った時は、状況が状況だったし、敬語を心掛けること以外は、特にそこら辺は考えないようにしていた。
だが今回は違う。
一つ間違えれば、彼女達に危険が及ぶ。
そう考えてたら、結局一睡も出来なくなって、いつの間にか約束の時間になっていた。
「そういえば前回、高圧的な態度とっちゃったんだけど、大丈夫かなぁ……」
「問題ありませんユウマ様! 例えお父様であっても、わたくしの目が黒いうちはユウマ様に指一本触れさせませんわ!」
「ははっ、心強いよ。その時はよろしく頼むな」
ユリスティナは優真にそう言われた瞬間、その瞳を輝かせた。
「お任せください!」
ユリスティナの笑顔に癒されながら、優真は彼女に笑顔を向けた。
「シェスカもね、シェスカもお兄ちゃん助けるの!」
「そっか~、シェスカもお兄ちゃんを助けてくれるのか~。じゃあ今日はお兄ちゃんと一緒に居てくれるかい?」
「うん、いいよ!」
近付いてきたシェスカの笑顔は、幼い見た目の通り、すごく可愛らしいものだった。優真は抱っこをジェスチャーのみでせがむシェスカを抱きかかえて、自分の膝の上に座らせた。
(まぁ、どうせ引き返すことなんて出来ないもんな……頑張ってくれたホムラ達の分まで、俺が頑張らないとな)
哀しく微笑む優真は、自分の気をまぎらわせるために、シェスカの頭を撫でた。
こうして優真達は馬車に揺られながら、パルテマス城に入った。




