番外編1 ~シェスカの反抗期!?~ 3
「これって……子ども服か?」
それは子どもサイズのルームウェアだった。
熊をイメージされたモコモコしている可愛い服だったが、サイズ表記もタグもついてない服だった。
「これどうしたんだ?」
「作った」
「へ~…………作った!?」
万里華の発言に驚き、その服をよく見てみると、内側に数ヶ所縫ったような痕があり、確かに手作りだと言われれば納得できるが、それでも、言われなければ気付けないぐらいの出来だった。
「これってシェスカぐらいのサイズだよな? もしかしてこの3日間で作ったのか?」
「そんな訳ないじゃん。これはね~、女神様用に作ったけど、サイズを間違えた最初の失敗作だよ。なんか、ミハエラ先輩に色々仕事を任せられた時に、女神様用の衣服を作る仕事も任されたんだよね。まぁ、最初はうまくいかなかったんだけどねぇ……ちなみにそれは、その時の失敗作の一つなんだよ」
「そんなことをさせられてたのか?」
「まぁね、でも楽しかったよ? ほとんど花嫁修業みたいなもんだったし。……まぁ、ミハエラ先輩厳しかったんだけどね……」
「万里華も色々と大変だったんだな……」
(……半分くらいは優真が無茶したからなんだけどね……)
万里華が俺から視線を反らしながら頬を人差し指でかいたことが、少しだけ気になったものの、とりあえずこれさえあればなんとかなると思った。
「なぁ万里華、これをシェスカに譲ってくれないか?」
「え? なんで私が?」
「えっ!?」
本当に驚いたような表情でその言葉を告げた万里華に俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
よくよく考えてみればそうだ。別に万里華がシェスカに自分が作った服をあげる道理がない。それなのに、万里華なら協力してくれるなんて勝手に思ってた。……なんて傲慢な考え方をしてたんだろ……。
「……ごめん」
なんだかいたたまれない気分になったため、彼女に謝ったのだが、万里華は俺が謝った瞬間、首を傾げた。
「何が? だいたいそれはもう優真にあげたものなんだから、どうするかは優真が決めればいいじゃん。私に許可をとる必要なんかないよ?」
「……いいのか? これは万里華が頑張って作ったものだろ?」
「そうだね。だから、誰かに着てもらいたいんだよ。私じゃどう頑張っても着れないしね。それに、優真からプレゼントされた方がシェスカちゃんも喜んでくれると思うよ?」
その言葉はきっと、俺を気遣ってくれたものだろう。その優しさに俺は彼女に相談して良かったと思えた。
「……ありがとう、万里華」
俺は彼女からもらったルームウェアを持って、椅子から立ち上がり、シェスカの部屋に向かおうとした。そこで、貰いっぱなしってのは良くないと思い、何かお返しをした方がいいと思った。
「……なぁ万里華。今度、今日のお礼にプレゼントを買ってあげるからさ、それまでに何が欲しいか考えといてくれよ……」
優真はそれだけ言うと、万里華の返事も聞かずに部屋から出ていってしまった。
「……じゃあ、左手の薬指に指輪が欲しい……かな……」
万里華の口から呟かれたその言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
◆ ◆ ◆
万里華のおかげで、シェスカの機嫌はかなり良くなった。
ちなみに、ルームウェアをすぐに着たシェスカを見た俺の感想は、高性能カメラをこの場に用意してこなかったことを猛省してしまうくらい似合っていた。
初めて着たその嬉しそうな表情と、無邪気にはしゃぐ姿は今だけのもので、もう二度と見れないかもしれない。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「お礼は俺じゃなくて万里華お姉さんに言ってくれ。今回俺は何もしてないしな」
「いいの! お兄ちゃんはね。今度シェスカと一緒に買い物行ってくれるって言ってくれたから、お兄ちゃんにもありがとうなの!」
「……そっか。今度の買い物には皆で行こうな」
「うん! 約束だよ!」
「ああ、約束だ」
小指と小指を絡みあわせて俺とシェスカは約束をした。
大事な大事な約束。この約束を果たすために、俺は絶対今回の作戦を失敗させる訳にはいかない。
そして絶対、今度は超高性能カメラを用意しとこう。
そう心に誓うのであった。




