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青年は丁寧な口調ではあったものの、その態度は頭を下げておらず、地べたに座らされている自分達を見下ろすように立っていた。悪意というものを感じはしないが、あまりいい態度とは言えなかった。
「貴様何様のつもりだ? このパルテマス帝国の皇帝にそのような態度で要求するなど、侮辱以外のなにものでもない。まずは皇帝陛下に頭を垂れよ!」
案の定、規律に厳しいディアンツスが、その表情に怒りをみせる。
「……はぁ……。いい加減にしてくれる? さっさと決めてくれないと困るんだけど……」
「ただの人間風情が運良くこの場に辿り着いたくらいで調子にのりすぎだぞ? それとも眷族である我に楯突くと言うのか?」
ディアンツスがそう言った瞬間、肌がひりつくような感覚に襲われた。ディアンツスは縛られながらも、眷族としてのオーラを発することで、黒髪の青年を威圧し始めたのだ。
しかし、黒髪の青年は温和な笑顔を崩そうとすらしなかった。
そして、青年が指を鳴らすと、体が押し潰されそうな圧迫感を感じ、全身から冷や汗が吹き出して止まらなくなった。
それは眷族ではない自分じゃ視認することすら出来ない眷族としてのオーラで間違いないと思った。
いつの間にか身体は土下座した状態で彼に頭を垂れていた。
本能が言っている。この男は本気でヤバい、と。
横を見てみれば、ディアンツスがガイベラスにさえ見せることがなかった怯えたような表情を、その青年に向けている。
「これで理解してもらえた? 俺もあんたと同じで眷族という立場なんだよ。……まだ何か言いたいことある?」
「こ……こんなことをして、一体何が目的なのだ!」
「はぁ? 俺はただ、お前達に危害を加えないと約束したうえで、助け出そうとしてるんだぞ? こんな敵しかいない城に俺達は命懸けで潜入してきた。お陰で仲間が何人も犠牲になった。明るい未来を信じて走った仲間達が、明るい未来を見ることなく死んでいった。俺はその仲間達のために、まだまだやるべきことがたくさんあるんだ。……もしも、条件を飲もうとせずに、俺や仲間達に襲いかかってきてみろ? その瞬間、お前らが行くのはユリスティナのいる場所じゃない。棺桶の中だ! よ~~~く覚えておけ!」
その発言で、このままいたずらに時間を伸ばせば、まずいことになるのは明らかだった。
「わかった! 条件を余の名でのむから、これ以上は!!」
顔を地べたに押し付けていた皇帝がそう言った瞬間、優真の表情は再び笑顔になった。
「わかってくれたらいいんです。こちらも無益な殺生は避けたい。そちらが応じてくれるのでしたら話が早くて助かりますからね」
自分達を圧迫する威圧感をもった青いオーラが徐々になくなると、3人は大きく呼吸をし始めた。
息をするのも忘れてしまいそうになるほどのオーラだった。
3人が息を整えている間に、優真はアイテムボックスを発動する。中から取り出したのは掌サイズの鉄で出来た板で、優真はその鉄板を鍵穴がついてる場所にピタリとくっつけた。
その瞬間、鍵が開けられる音がして、そのまま開かれてしまった。




