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薄暗い檻の中には、ほとんど光がない。息子を縛っていた鎖が消えてなくなり、ようやく静寂が訪れていた時だった。
ゆっくりと石畳の廊下を歩く音が耳に入ってきた。
その瞬間、自分の中で恐怖と怒りの感情が沸き上がってくる。
ここを知っているのはここに閉じ込めた奴だけだ。
今度は自分達にどんな仕打ちをしてくるというのか……。
しかし、目の前に現れた者は、自分の想像とは異なる人物だった。
黒いローブで顔以外の全身をおおった夜空のように黒い髪の青年で、何故か笑顔を振り撒いている。
「……貴様何者だ?」
隣にいた忠臣が、不審な青年に声をかけた。
「皆さんこんばんは。私は雨宮優真と申します。あなた方のように名前が先にくる訳ではないので、優真というのが下の名前です。気軽に優真とでも呼んでくだされば結構です」
普通にユウマと名乗ったその青年は、素性を隠す気が一切ないように見受けられた。
おそらく本名で間違いないだろう。
「あなた方は、この国の皇族で間違いありませんか?」
「ああ……余が24代皇帝フェムド・カルテス・パルテマスだ。そちは……ガイベラスの手の者か?」
「いいえ、あれとは今日が初対面です。私に依頼されたのは貴方のご息女、ユリスティナ皇女ですよ」
「ユリスティナ!? ユリスティナが何処にいるのか知っているのか! ……お……お前は!?」
青年が口にした予想外の発言に、痛みで意気消沈していた息子が声を荒げて鉄格子を掴んだ。
そして、青年を見た瞬間の反応から察するにどうやら顔見知りのようだ。
「お久しぶりです皇子様。その節は申し訳ありませんね。色々あって兵士を殴りたい気分だったのもあって、兵士の姿に変装していた貴方を攻撃してしまいました。ですが、貴方個人に敵対していた訳ではないので、怒りを鎮めていただけるとありがたいのですが……」
「いや、気にしなくていい。それよりも今、妹のユリスティナがお前に俺達を助けるよう頼んだって聞こえたんだが……本当なのか?」
「ええ、それについては後で詳しくご説明致しますが、まずは三つほど聞いていただきたい頼みがあるのですが……」
「……言うてみよ」
「ありがとうございます。一つ目は絶対に変な抵抗をしないでいただきたい。私もここまでくるのに色々と疲労が溜まっているので、できれば穏便に終わらせたい。二つ目は、我々を貴方の味方だと兵士や国の者を納得させていただきたい。そして最後に、この戦いが終わった後に、護衛なしで歓談の場を設けていただきたい」
黒髪の青年は1本ずつ右の指を立てながら、そう要求してきた。




