18-19
「……ご主人様、私は女神様のもとに、こいつを連れてなければいけないの。……だからご主人様とはここでお別れ……」
「そっか……」
メイデンは、ガイベラスの入ったアイアンメイデンをどこかに消してしまうと、俺の方を向いた。
未だにご主人様と呼んでくるものの、口調はだいぶ前の調子に戻ってきた感じだった。
彼女は、俺の方に小さく会釈をする。その姿には鎖で打たれたことによる打撲痕が多く見られ、他にも修道服が裂けて赤い血が流れているのが見える。
「メイデンさん……今日はありがとう。貴女のおかげで、なんとかガイベラスを倒すことが出来ました。本当になんとお礼を言ったらいいか」
「いい。……むしろ、私の方がご主人様に助けられた。……だから安心して。こいつには、死ぬのも生ぬるいと思えるような罰を与えてもらえるよう掛け合ってみる」
「え? あ、いや……それはありがたいんだけどさ……そいつまだ死んでないの?」
「……大丈夫、瀕死だけどかろうじて息はある。眷族は見捨てられたら化け物よりも質が悪い。……ご主人様も気をつけて」
「あ……ああ、気をつけるよ。それと最後にもう一度謝っとくよ。本当にごめん。魔法の件でメイデンさんにかなり迷惑かけたよね。もしかしたら、他の人にも迷惑かけるかもしれないけど、その時は慰謝料とか請求してくれていいから」
「……なんのこと? 私はガイベラスを捕まえた時から正常。別に迷惑をかけられた覚えも、これ以上迷惑をかけるつもりもない」
「え? ……え~っと、でも呼び方が……」
「この呼び方はかなり気に入ったから使ってるだけ。じゃあ、そろそろ時間だから……また会おうね、ご主人様」
メイデンは最後に少女らしいあどけない笑顔を見せて、何処かへと消えてしまった。
◆ ◆ ◆
この後、今回協力してくれた『救世の使徒』のメンバー達にガイベラスを倒したという報告を入れた。
喜びの声を上げ、俺を讃えてくれる彼らに、それぞれの被害報告を聞き、集合する事にした。上のメンバーは、2部隊が音信不通で残りの7部隊は13名が重傷、内2名が重体だった。軽傷者は結構おり、ホムラの部隊は廊下の隅に集められていた。鉄格子付きの牢屋に入れられて……。
おそらく、ウィルという奴と戦っている時に、メイデンさんが移動させたのだと思うが、外見的に最悪以外のなにものでもない。
だが、戦いに巻き込まれていれば、彼らの命も危険だったことは容易に想像できたため、心の中で彼女にお礼を言った。
その後、俺と共にガイベラス捜索及び、城内制圧を担当してくれていた者達と合流した。彼らの中には、亡骸となってしまった仲間を大事そうに抱える青年達の姿もあった。
彼らと共に地下へと赴き、アオイ達と合流した。
だが、キョウ君は話せる状態じゃなかった。
生きてはいたが、仲間の死を目の当たりにしたことによる精神的ショックから、動こうとも、話そうともしなかった。
だが、アオイから聞いた話によると、キョウは宙に吊られた仲間達の亡骸を丁寧に下ろし、カバーを被せたとの話だった。そのお陰で、双子姉妹だけでなく、後からきた仲間達も発狂せずにすんだ。
彼には本当に感謝しかなかった。
もう少し18章は続きます。
明日からは通常営業に戻ります。




