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「……ダンナ……大丈夫か?」
「…………うん……」
背中に背負っているホムラを床に下ろすと、彼女が心配そうに聞いてくる。だが、俺は即答出来なかった。
怒りで少しおかしくなっていたとはいえ、こうも人を刺すのに躊躇いを感じなかった自分が怖い。
こいつが人間だったら、とっくに死んでいてもおかしくない。
人は殺さないように生きたいと思っていたのに、仲間の死や、子ども達の死を嘲笑うのを聞き、自分を抑えることが出来なかった。ユリスティナ皇女をただの道具としか見ていないと聞いた瞬間、目の前が真っ赤になった。
……自分が怖い。……こんなの俺が望んだ自分じゃない。俺が人を平気で刺せる訳がない!! ……なのに、どうして俺の心は、こんなにも高揚しているんだよ……。
「……何してんの?」
ホムラのロープを取り終えると、ホムラが片膝をついている俺の頭を撫でてきた。
「……ダンナは私が辛そうな時、こうしてくれた。……だから今度は私の番だ。今日はダンナが私に目一杯甘えていいぞ」
「……ありがとう……でも、恥ずかしいから、出来れば離してくれるとありがたいんだけど……」
ホムラは、自分の薄い胸に俺の顔を押し付けて抱きしめてくる。その格好が恥ずかしくてそう言ったのに、彼女は首を振った。
「ダンナだって、皆が見てくれてる前でこうしてきた。……ダンナにちょっとした仕返しだ」
「……あれ? 慰めてくれてるんじゃないの?」
「……ダンナがそれでいいならそういうていでもいいぞ? ……でも、ダンナはこっちの方がいいだろ?」
その言葉が彼女からの気遣いなのだと思い、俺はされるがままになろうとした。
そんな俺の方によろめきながら近寄ってくる少女の姿があった。
それを見て、俺は慌ててホムラから離れる。
「お疲れ、メイデンさん。もう傷は大丈夫なの?」
その質問に、彼女は頷き、その小さな口を開いた。
「……ご主人様、ガイベラスは私がもらうけど……いい?」
「え? あ……ああ、問題ないよ。うちの女神もそちらに渡せと言っているみたいだし、ただ、まだ生きているみたいだから、気をつけてね?」
「……大丈夫……。【処刑道具召喚】解放……鉄の処女……」
その言葉が耳に入った直後、メイデンさんの隣にインターネットで見たことがある処刑道具がどこからともなく現れた。
おもちゃ箱とか言いながら剣とかアイアンメイデンとか入っていることに恐怖しか感じない。
そして、いきなり鉄の処女が開かれ、中から鎖が出現したかと思うとガイベラスに絡みつき、鉄の処女に押し込めてしまった。
中から大量の赤い液体が出てくるのを間近で目撃したことにより、彼女だけは絶対に怒らせないようにしようと心に誓うのであった。




