18-16
斬撃を置く虚空と斬撃を飛ばす飛空が、この数日で磨いた剣技の成果であり、それを見事に発揮して見せた。
「この糞ガキがぁぁぁあ! こっちが下手に出てりゃ調子に乗りやがってぇぇぇえ! よくも俺様の腕をぉぉぉお! 縛り殺せ【操鎖】発動!!!」
優真に向けて、無数の鎖が襲いかかっていく。
だが、優真に焦った様子はなく、振り上げていた剣を構え直した。
「【ブースト】全能力100倍、発動! 十華剣式、伍の型、白桜の舞い!!」
目にも止まらぬ速さで、優真は迫りくる鎖をことごとく、叩き斬っていく。
その速さを目で捉えることは、鉄の女神眷族筆頭のメイデンでも、至近距離に居続けているホムラでも不可能だった。
ただ、一つだけ言えることは、優真が押しているということだけだった。
やがて、優真の握る剣がガイベラスに迫る。
「くそっ! こっちに来るんじゃねぇ!」
そう叫んだガイベラスを守るのは、女神の形をした像が先端についた鎖だった。
どんなに怒り狂っていても、どんなに冷静を装っていても、眷族は自分の敬愛する神に、剣を向けることは出来ない。
だから、アマミヤユウマも鉄の女神の像を斬ることはできないとガイベラスは確信していた。
「邪魔」
その言葉が優真の口から放たれた直後、ガイベラスの奥の手は全て砕け散ってしまった。
「狂い咲け!! 十華剣式、肆の形、紅薔薇の舞い!!」
優真が繰り出した突きは、ガイベラスの体を貫き、赤い液体を辺りに巻き散らした。
だが、ガイベラスの胸に刺さった剣を、優真が引き抜いたことで、廊下に撒かれる血の量が増えた。
逃げようと必死に足を動かそうとするガイベラスの左足をぐさり、払おうとした左の手をぐさり、と何度も貫いていく。
普通の人間なら出血死になってもおかしくない傷だっただろうが、仮にも眷族だったガイベラスがそう簡単に死ぬことはなかった。だからといって、不死身でもなければ、痛みを感じない体でもない。
彼にも恐怖や痛みという人間らしいものがあった。
何度も何度も体を貫かれれば、死にはしなくても激痛や死への恐怖が彼の精神を蝕んでいく。
「や……やめてくれ! もうやめてくれ!! そうだ! 金ならいくらでもやる! なんなら私が皇帝になった暁には貴様を右将軍という最高位の地位にしてやる! 領地が欲しけりゃ何処でもやるぞ? それとも女か? 国中の美女を見繕えばお前は満足するのか? ほら、なんでも言え! 望みはなんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、優真は溢れてくる笑いを抑えることが出来なくなった。




