18-11
ウィルと名乗った敵の男は、ホムラに麻酔弾を撃たれて眠ってしまった。
「すいませんダンナ、勝手な真似をして……」
勝手に戦いの邪魔をされて怒っていると思ったホムラは、優真の顔を見れなかった。
(いくら心の広いダンナでも、戦いに水を差されたら、さすがに怒るだろうな……)
「よくやった」
しかし、彼女の予想に反して、優真は優しい口調でそう言った。
その言葉に衝撃を受けたホムラは優真の方を見るが、本当に怒っていない様子だった。
「なん……で?」
「なんでって……今のは完全に俺の勝ちだし、今の見た感じだとどちらかが死ぬまでとか言い始めるかもしれないだろ? そんな時間は俺にないし、銃の腕前もノーコンな俺じゃ力で気絶させるしかないし……そうなるとこいつにかなりの時間を要していただろ? 俺達の相手はこいつじゃないし、こいつが満足するまで遊んでやる理由もない。ホムラが撃ってくれて助かったよ」
ホムラにとってそれは予想外にも程がある言葉だった。
大人とは自分の邪魔をされたら怒るものだと思っていたし、今まで出会ってきた大抵の大人はそういうものだった。
自分がいくら正しくても、力の強い相手はそれを認めず、無抵抗の自分を暴力で黙らせていた。さっきのウィルという男も戦闘の邪魔をした自分を踏もうとしていた。
だから、こうして感謝されるとは思ってもみなかった。
(……今なら神様が言ってたこの人が他とは違うって意味もわかる気がするな……)
「ありがとうダンナ! ダンナのおかげで助かったよ」
「いいよ」
その視界に映った優真の笑顔は、何かがすごい勢いで近付いてくる音と共に、廊下のタイルに変化した。
直後、そのタイルに何かがぶつかり、目の前で砕けてしまった。
自分の腹部には腕が回っており、自分が担がれているのに気付いたホムラは、下に向けていた顔を横に向けた。
そこには先程まで、優しい笑顔を向けていた青年が、険しい表情を見せていた。
彼の左腕には同じように腰に手を回されていた修道服の少女が驚いた顔を見せていた。
よく見てみると、3本の長い鎖が自分たちのいた場所を襲っているみたいだった。あのまま、そこにいればどうなっていたかを想像すると、体が震えてくる。
そして、鎖が来た方向を見てみると、一人の男が立っていた。
男から目を離さず、少し離れた位置に優真は降り立ち、二人を床に下ろした。
「なぁメイデンさん、一応聞いとくけどさ……あのハゲがガイベラスで間違いないか?」
「……はいご主人様、あのハゲが、私達を裏切り、この国を乗っ取ろうとしたガイベラスで間違いないです」
横顔を向けられたままの質問に対し、メイデンはその言葉に肯定した。




