18-10
先程、止まった世界の中で、【ブースト】の発動条件が揃った。だが、能力はここぞという時まで取っておくことにした。
その判断が吉と出るか、凶と出るか。
それは優真自身の地力にかかっていた。
ゆっくりと剣の持ち手に手をかけ、その一瞬を見極める。
「いくぞ」
優真が呟いた言葉の直後、優真とウィルは同時に床を蹴り、距離を詰めた。
優真の握る両手剣と、ウィルの振るう太剣が火花を散らす。
「やっべぇなおめぇ! ひょろっちい見た目のくせして、とんでもねぇ力じゃねぇか!」
「お前やライアンさんと比べたら大抵の奴がひょろっちくなるよ!」
お互いに様子見のつばぜり合い。だが、眷族相手にただの人間でしかないウィルが、様子見の状態で耐えられるはずがなかった。
優真の力に押され、ウィルはバランスを崩される。
腕を地面についた瞬間、優真は距離を取り、万全の態勢に移る。
居合いのように剣を腰のあたりで構えるが、鞘にはおさめず、剥き出しの状態で持っている。
「悪いが、少しでも時間が惜しいんだ。さっさと終わらせる。十華剣式、壱の型、菊一文字!!」
菊一文字、その言葉を言い終えた頃には、優真の姿は既にウィルの後頭部が向けられている方向だった。
「……マジ……かよ」
そう言ったウィルの手に握られていた太剣は砕け散っていた。だが、どちらかというと、それは優真の台詞だった。確かに今回は【ブースト】を使ってはいないが、今までそれを見切れた人物を優真は村の外では見ていない。
それをこの男は初見で見切ったのだ。村にいた頃より大幅に進化した技をこいつは太剣で防いでみせたのだ。
「くそっ、こうなったら腕っぷしで勝負といこうじゃねぇか!」
ウィルは砕けた太剣の柄を捨てると、すぐに立ち上がって拳の間接を鳴らし始めた。
その直後、ウィルは首筋に何かが刺さる感じがし、首筋を押さえた。そこに刺さっていたのは、鋭い針のようなものがついた銃弾のようなもので、ウィルがそれに触れた瞬間、急激に睡魔が彼を襲った。
薄れゆく視界の中に映ったのは、銃をこちらに向けている赤い髪の少女の姿だった。




