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「お……今度の奴らはひょろっちい男と、ちび女か? ……だが、こいつらよりはマシそうじゃねぇか」
男は優真とメイデンの姿を見て、口角を吊り上げた。
鎧で視認できないが、体格から考えてかなり鍛え上げられた体をしている日焼けした肌をみせる茶色い短髪の男性、20代前半くらいだと思うほど、若く見える。
そして、鍛え上げられた肉体に装備された鉄製の鎧は、かつて見た加護付きのものによく似ている。
「……ご主人様、こいつはガイベラスではないです。あのハゲとは、方法から顔まで似ても似つきません。そもそも、ガイベラスならあの踏みつけられている少女の息はもう無いでしょうし……」
優真の後ろに控えていたメイデンは、その情報を優真に教えた。
「……帝国の兵士にも強い奴はいるってことか……」
「俺っちの名前はウィルだ。用具入れの部屋で寝てたらやけに外が騒がしいからよ~。何事かと思って出てきてたら、この女共が襲いかかってきたからそれ相応の仕返しをしたんだ。……俺っちなんか悪いことしたか?」
「まぁ……お互いに目的があるんだ。戦争でどっちが正しいかなんて二の次なんだろ?」
その言葉にウィルは、にやけ顔を見せる。
「そうだな。一番は勝った方が正義で負けた方が悪になるもんな」
優真の意図が伝わり、ウィルと名乗った男の意識が優真に向く。一触即発の空気が辺りを支配するこの空間で、口を開いたのはホムラだった。
「ダンナ! こいつがガイベラスじゃないんなら、ダンナの手を借りる訳にはいかねぇ! ここは私がなんとかするから、ダンナはガイベラスを!」
「……彼女のおっしゃる通りです。こんな男に割く時間がもったいなさ過ぎます。当初の目的通り、ご主人様はガイベラスの方に向かわれた方がよろしいかと」
ホムラに続き、隣にいるメイデンも張りのない声で優真の軽率な行動を止めに入る。
しかし、彼女達がその言葉を発した直後、ウィルの額に筋が浮かび始めた。
「ガキ共が男の闘いを邪魔してんじゃねぇ!」
ホムラを踏みつけていた足を上げ、ウィルは怒り任せに力一杯、足を振り下ろす。
だが、うつ伏せになって動けないでいた少女の姿は、踏みつけた時には既に無かった。
「最初に言っておくことがある。俺はどんな時でも、目の前で助けを求める子どもに手を差し伸べる大人でありたいとおもっているし、もう二度と幼なじみに否定されるような選択はしたくない。だから俺に、ホムラを見捨てるという選択肢はない」
いつの間にか横に抱かれていたホムラは、何が起こったのか分からなかった。
それは、ホムラだけでなく、メイデンもウィルもだろう。
至近距離で見える優真の真剣な顔に、心臓が高鳴っていくのを感じる。
優真は腕の中に抱いていたホムラを壁に寄りかからせ、彼女の頭を軽く撫でる。
少女は名残惜しそうな視線を優真の背中に向けるが、戦いの疲労で既に腕を上げるのも辛かった。
「さぁ、戦いを始めようか。お前には幼き者を守る奴の強さってやつを直に味わわせてやるよ」
「いいな! いいなお前! 早く始めようぜ! 俺っちはつえぇ奴と戦いたくて、軍に入ったんだ! 少しは楽しませてくれよ!」
そして、優真とウィルの戦いが始まった。




