18-1
闇夜に紛れて素早く移動する集団の先頭は、空の色と同じくらい黒い髪の青年だった。
その青年の次を走るのは黒い修道服に身を包んだ銀髪の少女と、皆と同じ黒いローブで炎のように赤い髪を隠す少女だった。
そして、彼らは隣町の王都にそびえ立つ城の近くに着いていた。近くにある巨大な時計塔が、今の時刻が丑三つ時の10分前を指しているのを見て、黒髪の青年はフードを取る。
「さて、後は時間になれば、さっき別れた100人と共に潜入する。ここで5分程休憩にしよう」
黒髪の青年がそう言うと、修道服の少女が話しかけてきた。
「……あの……せっかくなら早めに私が陽動でもしてきますか? 私こう見えて結構強いですし……」
張りのない声で聞いてきた少女に黒髪の青年は首を横に振った。
「駄目だ。ここは足並みを合わせて動く。メイデンさんにそんなことさせたなんてうちの女神に知られたら、なんて言われるかわからないしね」
「……かしこまりました。ご主人様の意のままに」
少女はかしずいて頭を垂れる。
「な……なぁダンナ……本当にそいつは今朝のと同一人物なのか? 私にはとてもそうは見えねぇよ」
「……奇遇だね。俺もだよ……」
黒髪の青年と赤髪の少女は、修道服を着た少女を見て違和感しか覚えなかった。
というのも、そもそもの発端は優真が彼女をホムラ達に紹介したことだった。
優真がホムラ達にメイデンこと鉄の女神の眷族筆頭を紹介すると、メイデンは自分勝手なことしか言わなかった。
それどころか、信仰者でしかない彼女達を肉盾としか見ていない。こうなってくるといくら眷族でも、ホムラ達が怒るのは時間の問題だった。
メイデンに悪気が無いのは、優真にもホムラにもわかった。だからといって、作戦決行日に味方の士気を下げるのは悪手だ。
そこで優真は、自分が使える魔法を試してみることにした。
『チャーム』と『マインドコントロール』という名前だけ見ると、絶対嫌な予感しかしない魔法だが、マインドコントロールという思考誘導する魔法なら、彼女に集団戦闘の大切さがとけると思ってやったのだ。
もちろん、優真はメイデンに了承をとっている。
メイデンもこのままだと作戦失敗のリスクが高いと言ったら、案外すんなりと使わせてもらえた。
そして、神への祝詞を詠唱し、『チャーム』と『マインドコントロール』をかける。
結果こうなった。
メイデンは優真に従順となり、ご主人様と呼び始め、基本的に何でも言うことを聞く。呼び方だけは直さないが、ここまで従順になると優真もやらかしたことには気付く。
相手の神様に怒られるんじゃないか……と心配になるが、子どもを司る女神経由で届いた鉄の女神からの伝言は『面白いものが見れたから別にいいよ』という内容で、結局このままでいくことになった。




