15-22
優真は天井を完全に壊し終えたファルナを見上げながら、彼女が言った言葉を理解する。
「眷族にするのか……なら俺の仕事は?」
「私が準備している間、【勇気】を使用して子ども達を助けてあげてほしい。多分、暴走化状態に完全移行したら無差別に人を襲うから……。そして……この頼みを君にするのは嫌だったんだけど……彼女が動けなくなるくらい、力で屈伏させてほしいんだ!」
女神から話を聞いている時だった。
いきなり、牢屋の鍵が開けられ万里華とシェスカが中に入ってきた。
女神自身も彼女達の行動が読めていなかったのか、驚いた顔を見せている。
「!? まずい!」
二人が入ってきた瞬間、白く猛々しい虎の姿になったファルナが瞑っていた目を開き、鼓膜が破れそうになるほどの咆哮をあげた。
加護の対象者である信仰者や子ども達は全員耳を塞ぐことで事なきを得た。
だが、咆哮をあげたファルナは巨大化中に壊した天井から上の階に上がっていった。
「…………皆無事か~?」
上の階を走っている足音を聞きながら、優真が全員に聞くと、幸いにも牢屋外の全員が無事だった。中に入ってきた二人はぎりぎり自分が庇える範囲にいたことでなんとか無事だった。
立ちあがった優真は、その顔に怒りをみせた。
「何やってんだ! ここは危険なんだぞ! こんなところに入っちゃ駄目だろ!」
優真はシェスカに怒鳴ってしまうが、それは本当に危険だったからだ。
シェスカは呆けている万里華から鍵を無断で取って勝手に開けていた。
元々子どもばかりの施設だったためか、低い位置についている鍵穴はシェスカにも開けられる高さだった。
怒りに任せて怒鳴る優真だったが、シェスカの目に涙がたまっているのを見て、強く怒鳴りすぎてしまったことを知った。
「ごめんシェスカ……強く言い過ぎた。……でもな、危ない場所に入ったら皆も危なくなるんだ。こんなことはもうしちゃ駄目なんだよ…………わかってくれたか?」
シェスカは無言で涙を拭って頷いたことで、優真もこれ以上言う必要はないと思えた。
膝をついて少女の頭を撫でていた優真は、急いでファルナの元に行こうと立ち上がると、シェスカが自分の足に抱きついてたのが見えた。
「……ねぇお兄ちゃん……シェスカのせいなの? シェスカのせいでファルナお姉さんあんなになっちゃったの? ごめんなさいしたら戻ってくる?」
その言葉になんて答えればいいかわからなかった。
それでもシェスカのせいではない。
麒麟という存在がファルナを見捨てなければこんなことになっていなかった。
悪い人間が私利私欲のためにファルナを捕らえなければ、麒麟から捨てられることはなかった。
ファルナは一番の被害者で、暴走させているのは支えがなくなった彼女の身にあまる力だ。
力も神も人間でさえも敵になってしまったファルナにとって、シェスカは自分を一時でも取り戻せる程の存在だったんだろう。
……ファルナが大切に思っている存在を、暴走の原因にしてはならない。
「安心しろシェスカ、あれはシェスカのせいじゃない。お兄ちゃんが絶対に助けてきてあげるから……そんな顔すんな。ファルナを助けたら、一番にシェスカのところに連れてくるからさ……笑顔で待っといてくれ」
優真はシェスカの目から流れた涙を指で拭う。
その瞬間、脳に響くような音が聞こえた。
『子どもを助けに向かうという意思を確認。条件を達成したため【ブースト】が発動します』
その文章にあわせて体の傷が癒えていった。




