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危険を知らせようと声を出そうとした瞬間、耳に届いた甲高い音が、ホムラの行動を止めた。
そしてその音がした方向には、自分の敬愛する女神の眷族様が襲ってきた少女の目の前で手を合わせていた。
「早く避け……て?」
何がしたいのかよくわからない彼の行動を見て、ホムラは再び避けるように言おうとしたが、その言葉は途中まで口に出したところで意味がないことを知った。
襲いかかってきた神獣族の少女がいきなりよろめいたのだ。
優真はその隙をついて、ファルナのこちらに向けていた手を取り、一瞬で押さえ込んだ。
「こんにゃろ~……錯乱して襲いかかりやがって……人がせっかく少ない賃金で買ってあげた服と帽子もぼろぼろにしてるし…………そんなになるくらい怖い目にあったんだな……」
「うがぁぁぁ!」
「おとなしくしろってば……こういう時はどうしたもんかなぁ……習い損ねたなぁ……」
暴れて振りほどこうとしているファルナを怪我させないように押さえ込んだのはいいものの、そこから先どうするべきかが今の優真にはわからなかった。
怪我をさせる恐れもあったため、これ以上無理矢理押さえ込むことができなかった。
ましてや、暴れる少女は自分で自分を痛めつけている。今にも掴んでいる腕がおれそうになり、変な方向に曲がりそうな光景が優真の良心を刺激していく。
これ以上は逆効果にしかならなかった。
優真は押さえ込んでいた痛がるファルナから手を離し距離を取ったが、次からは【勇気】に頼れないことが選択肢の幅を狭めていった。
◆ ◆ ◆
「……勘弁してくれよ」
優真がそうぼやくと目にも止まらないような一撃が優真の顔面を捉えた。
握られた彼女の拳には少量の血が付着しており、鮮血が優真の口からもポタポタと地面に落ちていく。
先程から避けれていたはずの攻撃が当たるようになってきていた。
神獣族として戦闘力が高いファルナの一撃は鋭く重い。彼女を抑えていた理性という枷が外れたことにより、単調な攻撃にはなっているものの、その純粋な力は【ブースト】無しの優真を遥かに凌いでいた。
最初の方は避けれていたものの、徐々に速くなっていく攻撃に優真がついていけなくなっていた。
途中何度か普通に殴ろうとしたが、理性が邪魔して彼女を殴ることができなかった。
しかし、躊躇いは殺す気で来ている相手の前では大きな隙になってしまう。
顔を殴られたのも2度目で、体には服がズタズタに切り裂かれた跡しかない。
途中シルヴィ達がやめてと何度も叫んだり、中に入ろうとする場面もあったが、その度に優真は自分の無事と「こっちに来るな!」という怒声が入り交じった声でその場に留めていた。
だが、今まではそれでなんとかなっていたが、既にそんな気力は彼になかった。




