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「……ごめん……彼女との約束で名を明かしてはいけない決まりなんだ。例え、信仰している女神様の眷族から頼まれたとしても言うわけにはいかないんだ……わかってほしい」
バートラムさんはその名だけは明かそうとはしなかった。
「……そういうことなら無理には聞きません。それで問題無いよな?」
その言葉にシルヴィと万里華の二人は賛同してくれたが、女神は急に険しい顔つきでバートラムさんを睨み始めた。
「どうかしたのか?」
「いや……彼に一つ忠告しておくことができただけだ」
「真面目な話?」
「まぁ……そんなとこだよ」
「ふーん……俺は聞かない方がいい感じ?」
「そうだね。優真君は皆とどこかに行っておいてほしいかな」
「あっそ……あんまりいじめてやんなよ」
「そりゃ保証しかねるねぇ」
「……何を言われるのかはわかりませんが……そちらの事情を詮索するのはやめておきましょう……そうだ。ホムラ君……彼らなら例の子をどうにか出来るかもしれない。案内してあげてくれないか?」
「えっ? ええ……バートラム博士がそれでいいって言うなら別に構わねぇけどよ……本当にいいのか?」
「別に構わないよ。私達にあの子を束縛する権利はないからね」
バートラムさんがホムラに対して、そう告げるとホムラはため息を吐きながら部屋の外に出た。
「あの子?」
「ちょっと訳ありの子がいてね……少し会うだけでもいいのでお願いできませんか?」
「別に構いませんが……俺にはなんの力もありませんよ?」
「ご謙遜を……心配はないかもしれませんが充分注意してくださいね……あなたに何かあれば、私は信徒に殺されかねないので」
「ははっ……そんなことにならないよう気をつけますよ……」
笑えない冗談だなぁと思いつつも、俺はシルヴィと万里華の二人を連れて、シェスカを再びおんぶして、ホムラの後をついていった。
◆ ◆ ◆
優真達が出ていったことでバートラムは書類が散乱した部屋で幼い見た目の女神と二人っきりになる。
先程までは、子どもっぽい感じの神だとしか思っていなかったが、今の女神からは息をするのも忘れてしまうような威圧を感じた。
「……それで……忠告とはどういうものなのでしょうか?」
緊張で声が震えているのを感じながら、バートラムはその言葉を紡ぎだした。その言葉を言っただけなのに、変な汗まで噴き出してくる。
「あぁ、そんなに緊張しないでいいよ……と言っても無理なんだろうけどさ。まぁそんなに難しいことじゃないよ。君がさっき何気ない気持ちで伝えようとしていたこの世界の仕組み……それを彼に伝えないでほしい」
その言葉に違和感を抱いたバートラムだったが、彼女の前ではそんなことを聞くことすら躊躇われた。
「彼には私から伝える。だが、その前に向き合ってほしい問題があってね……私自身目的を果たすために下りてきたんだ。まずは、その問題点を解決してからでないと彼には伝えられないんだよね……わかってくれるかい?」
その言葉に否定的な意見が出るはずもなく、バートラムは素直に頷くことしか出来なかった。




