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13-8

 そんな最悪な事態を考えていると、目の前にいるハナさんがほんのりと朱に染めた顔を、徐々に俺の方に近付けてきた。

 体をよじろうと思っても布団越しに女性とは思えないような力で押さえつけられていたため逃げられなかった。

 ……こうなったら説得して退いてもらうしかない!


「やめてくれ! 俺にはシルヴィがいるからこんなことすんな! だいたいお前ら親友なんだろ? こんなことしたらシルヴィだって悲しむだろ!」

「……親友だからだよ……親友だからシルシルが大事なんだよ……」

「えっ?」

 予想外の答えのせいで、更に頭が混乱してくる。

(何故この行動がシルヴィのためになるんだ?)

 そんな考えをしていると、彼女は更に顔を近付けてきていた。

 彼女の息を押し殺すような吐息を肌に感じる程の距離、彼女は目を閉じて俺の口に自分の唇を近付けてくる。

 だが、唇と唇が交わりそうになった瞬間、顔を逸らすことで唇を奪われずに済んだ。


 自分の頬に彼女の唇が当たる感触を感じる。

「も~、避けるから外しちゃったじゃない! 今度はしっかりと押さえておかないとね!」

 そう言った彼女は、俺の腕を押さえていた両手で俺の顔が動かないように固定すると今度は息つく暇もなく、すぐに彼女の唇が襲ってきた。


 容赦なく奪われた唇。一瞬だけではなく時が止まったかのように彼女の唇が俺の唇に吸い付いてくる。

 脳がとろけそうになる程のキスに、頭が真っ白になる。


 このまま身を任せてもいいのではないか?

 彼女の言う通り初めてで失敗して気まずい経験をするよりも、経験を得てリードする方が良いのではないか?

 そんな考えが頭を過る。

 実際、彼女は美人だ。若くて可愛らしい少女に襲われるというシチュエーションも決して嫌いという訳ではない。


 だが俺は、空いた両手を使って彼女を引き剥がし、無理矢理拘束を解除した。


 ◆ ◆ ◆


 真夜中の風呂に入っていたシルヴィは、自室に戻るため、廊下を歩いていた。そんな彼女の耳に廊下まで聞こえる程の声が聞こえてきた。

「ユーマさん?」

 

 シルヴィは彼の部屋まで行くと、少しだけ開いている襖の隙間から中を覗いてみる。

 暗がりでよくは見えなかったが、廊下からの明かりで誰かが布団の上で四つん這いになっているのがわかった。

 自分と同じくらいの身長で、浴衣を着ている人物なんて一人しか思い浮かばなかった。

 シルヴィは襖から手を放して数歩後退すると、何処かへ走って行ってしまった。

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