12-10
シルヴィに案内された場所には洋画で見たことあるような墓がいくつも並んでいた。数多くある墓の一つに先程会っていた全員が集合していた。
ハナさん以外の4人は沈んだ面持ちで立っており、ハナさんは墓の前で祈るように手を組んでいる。
ハナさんが手を組んだまま何かを呟くと、彼女が屈んでいる辺りに沢山の花が咲き始めた。
「さぁ、この花をシルベスタさんに供えてあげて」
その言葉で全員が彼女の指示に従い、花を彼女から受け取り供えていく。
俺自身も周りに合わせて同じように花を供えていく。
少女達は涙を目に溜めながら、手を組んで祈る。俺にはこの世界のやり方がわからなかったため、日本で墓参りをする時のように手を合わせて目を瞑った。
婆さんには本当に世話になってばかりだった。
軟禁されていたのに村の中で基本的に自由行動ができたのは、婆さんが皆を説得したからだ。
あの人がシェスカを何度もこっちに寄越していなかったら、今も1人で村人を恨む生活を続けていたかもしれない。自分を見失わずに済んだのは婆さんの存在が大きかっただろう。
この半年間、こき使われることも数多くあった。それでも婆さんを嫌いになることはなかったし、保育所を手伝わせてもらえたこともいい思い出になった。
楽しかったことばかりじゃない。
もちろん最初から慕っていた訳じゃないし、何度も口喧嘩になることはあった。
それでも、婆さんとシェスカ、そしてシルヴィと一緒に囲んだ食卓は俺にとって最高の思い出だ。
(婆さんの代わりに保育所をやることは出来ないけど……いつか立派な保育士になって、またシルヴィとシェスカを連れてここに来るよ)
その言葉を心の中で言い終えた俺は立ち上がって、他の皆と合流しようとするが、シェスカとシルヴィはまだ続けていた。
シルヴィは目を瞑って口に出してはいなかったが、その頬には涙が伝った跡が見受けられた。言えなかった別れの言葉でも言ってるんだと思った。だが、逆にシェスカは大声でいろんなことを報告していた。
その中には俺たちからしたらどうでもいいような情報が含まれていたりしたが、それでもシェスカが伝えたいと思った言葉なら誰も止めはしない。
「あっ! それからね! お兄ちゃんとお姉ちゃんが結婚するんだよ!!」
そのいきなり放たれた爆弾発言には隣にいたシルヴィは勿論のこと、シェスカ以外の全員が驚いた顔を見せて声をあげた。
「ちょっ……シェスカ! なんでそれ知ってるの!?」
焦った様子のシルヴィはシェスカに問い詰めるが、シェスカはなんでそんなに焦っているのか理解できてはいなかった。
「ん~とね~? お兄ちゃんとお姉ちゃんが話してるの聞いたからだよ~? この国で結婚すると捕まる可能性が高いから他の国でやるんでしょ?」
「……あれ、聞かれてたのか……」
シルヴィ達の邪魔をしないように少し離れた位置で立っていた優真がそう呟くと隣に立っていたライアンが優真の背中をおもいっきり何度も叩いてきた。
「おお!! ついに男を見せたかユウマ君! ということはもうあんなことやそんなこともやったんか?」
「ライアンさん……ここは墓場ですよ……そういう話はここでは慎みなさい」
「堅いこと言うなよ村長! それで? どこまでやったんだ?」
その痛みで咳き込む優真はハルマハラの方に助けを求めようとするが、先程の報せに心が舞い上がっている様子だった。
「ああ……弟子の結婚とはなんて嬉しいサプライズだ! 早速家に帰って祝杯を挙げなければ!」
「……よりにもよってライアンさんがいる時にばらされるとは思ってなかったわ……」
優真はライアンにもみくちゃにされつつもそんな時間が少しだけ嬉しかった。
その時だった。強い風が吹き、シルベスタに供えてあった花の花弁を飛ばした。
色鮮やかな花弁は宙を舞い、幻想的な光景を作りだす。
その光景に目を奪われていたシルヴィが「綺麗……」と呟くのを聞いて、ライアンのところから抜け出して彼女の隣に立った優真がその言葉に同意する。
その傍ではシェスカがその光景を見てはしゃいでいた。
「おかしいな~? ここって外界と繋がっていない異空間みたいなものだから風なんて吹かないのに……」
ここの住人であるハナは不可解な現象に驚きの声を上げていた。その呟きは優真達とは離れていたため、近くにいる村人3人にしか聞こえなかった。
「ライアンさんが不謹慎な話題を出すから怒ったんじゃないですか?」
優真達に聞かれないように声を潜めて言ったマーカスの言葉にライアンが焦り始める。
「まじかよ!? 酒でもやったら許してくれねぇかな?」
「ふふっ、違いますよ。きっとシルベスタさんが3人の門出を祝ってくれているんですよ」
ハルマハラの言葉は幻想的な光景に目を奪われている3人に届くことはなかった。
だがきっと、彼女の気持ちは3人に届いたことだろう。




