239話 逃れられぬ死
突如として姿を現した青年は、城に入ることは許さないとばかりに立っている。
俺は青年が動き出さないことを確認して、剣を放り投げ『霊質』に戻す。
すると剣の形状がドロリと溶け、空気と同化するように霧散する。
「儂を相手に、魔力の優位性を捨てるというのか……」
青年は目を細め、訝しむように呟いた。
だが俺はそんな呟きなんて気にせず、魔力を循環させる。
体中に自然と血液が巡るように、ゆっくりと魔力で身体を包み込み保護する。
その瞬間、俺は青年との距離を詰めて殴り飛ばす。
「なっ───!?」
青年は叫び声を上げながら、地面に叩きつけられ何度か転がった。
その隙に、俺は【解析鑑定】を発動して敵の情報を分析することにした。
─────────
名前:タンタロス
Lv:43
種族:不死屍
職業:呪術師
魔力:< 詛咒傀儡>
種族能力
・超速再生
特異能力
【呪怨之王】
・神堕幻惑蜜香
・呪怨殺毒濃霧
・磐造偶人
・聖酒酔雨
魔術
・闇属性魔術
・無属性魔術
耐性
・殺傷耐性
・魔術耐性
称号
・[不死王]
─────────
「貴様っ! この程度で儂が倒れるとでも思うたかッ!?」
青年ことタンタロスが、激高して殺気を放つ。
だがそこまで気迫がなかったので無視し、俺は【磐造偶人】のスキルを注視する。
すると数秒後にそのスキルの詳細な情報が表示された。
【磐造偶人】……一定以上の硬度をもつ鉱物から自身の分身体を作り出すスキル。自身のレベル以下の分身体を作成できる。最大使用回数は4回、1回使用につき1人の分身体を作成可能。
「チィッ……儂の全力の殺気ですら微動だにせんとはのぅ」
タンタロスがなにか呟いたが、攻撃してくる気配はないので放置する。
すると、怒号を浴びせてくるかと思ったが、体を屈めて地面に手を当てて魔力を流し始める。
俺は攻撃に転じられるまでに情報の整理をしようと思考速度を早めることに決めた。
スキルを見る限り、呪術の使用過程で偶然得た物だろう。
そうでなければスキルの一貫性がなさすぎて、説明がつかなくなる。
というか、思ってた以上にHPは高くないんだな。
これなら攻撃を避けつつ、殴っていけば倒すことができるな。
「───< 詛咒傀儡>」
タンタロスが両手を掲げると、周囲の地面が次々と隆起し腕が出てきた。
地面から這い出てきたのは骸骨人と死屍人だけだが、その数があまりにも異常だ。
漆黒の城に攻め入るが如く俺の視界を埋め尽くしている亡者たちが、俺に向かって一斉に突撃という雪崩れを引き起こす。
「地盤よ、砕け散れ」
俺は足を介して大地に魔力を浸透させる。
広範囲に浸透させた魔力を、死体が埋葬されていた場所に蓄積させる。
徐々に圧縮していき、瞬間的に上空へ向かって解放する。
すると魔力の奔流が大地を砕き、大勢の骸骨たちを刺し貫いた。
奇跡的に貫かれなかった骸骨たちは、地盤が砕かれた影響で吹き飛ばされた。
「なっ、なんじゃと!?」
吹き飛ばされないように飛び退いたタンタロスの顔が驚愕に染まった。
俺は一瞬で距離を詰め、背後から回し蹴りを繰り出すと何度か転がって城に激突した。
タンタロスは城壁と扉を突き破って、城内に入り込んだようだ。
「逃げられる前に追いかけるか」
魔力を脚部に蓄積させて圧縮し、解放する。
それを走りながら連続で行なうことで、圧倒的な速さを持続的に得られる。
俺は城壁を飛び越え、穴が空いている扉をくぐり、城内へと入る。
「な、なんなのじゃ! 貴様は───」
タンタロスが瓦礫の上で腰を抜かして叫んでいる。
その視線の先にいたのは、漆黒の鎧を装備している騎士。
だが、頭部に漆黒の兜はなく、その代わりとでもいうように蒼炎が揺れ動いている。
右手には血のように赤黒い錆がついた長剣を携えて、悠然と立っている。
『外敵ヲ、排除スル……』
どこからともなく声が聞こえると、騎士がタンタロスの首目掛けて剣を薙いだ。
刹那、首が血飛沫を撒き散らしながら宙を舞い、地面に打ち付けられて数回ほど転がった。
取り残された体の切断面からは、噴水のように血がドバドバと溢れ出していた。
不死王を瞬殺───
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