238話 魔術師の亡骸
「───ッ!!」
死骸霊王と思われる骸骨が声なき声を上げる。
すると骸骨の掌で魔力が練られ、そこから『爆裂』と『水渦球』の魔術を使用した。
それに対し俺は、魔力で6重の障壁を硬度・密度を変えながら半球状に展開していく。
最後の6層目の障壁が展開された瞬間、炎と氷が障壁に衝突し霧散する。
「やっぱりか。障壁に当たる前に魔力に触れたせいで術式が乱され、正常に機能しなくなったことで霧散したのか」
骸骨は驚きながらも、俺の障壁を割るために『風刃』を発動させた。
薄く鋭い風の刃がいくつも解き放たれ、真空の境を生み出しながら俺に迫る。
だが、眼前に立ち塞がる6重の魔力障壁によって妨げられ、風の刃は俺に届くことなく消滅する。
俺は追撃が来ないことを確認して、魔力で構築した槍を骸骨に向かって投擲する。
「征け」
槍は魔力障壁を擦り抜け、骸骨目掛けて一直線に飛んでいく。
骸骨は驚愕して口を大きく開けたが、我に戻ったのか落下するように槍撃を避けた。
「普通の槍なら、その対処法は間違っていない。だが、この槍は俺の意のままに動く」
俺は静かに告げ、骸骨が完全に槍を意識していないのを確認して、槍を逆方向に駆動させる。
ついでにこの骸骨が人の発言を理解していないということも知ることができた。
「───ッ!?」
俺は骸骨が言語を理解していないことを確認して槍の移動速度を上昇させた瞬間。
骸骨がなにかを感じ取ったのか、急に俺から目を離して背後へ振り返った。
槍を認識してしまった骸骨から意識を魔力障壁に向けて、障壁として『物質』になっていた魔力を元の『霊質』に戻す。
「しかたない。俺も動くとするか」
俺は全身に魔力を循環させて、最小限の魔力を下半身に溜めて圧縮し、跳躍する瞬間に解放する。
すると解放された魔力が爆発的に膨れ上がり、速度が一瞬だけ上昇する。
上空に向かって跳躍した俺は、槍を俺のもとまで誘導して指をパチンと鳴らして槍の移動経路を変更する。
指を鳴らす時に少量の魔力を波動として槍に接触させ、魔力を流して槍の硬度・速度を増加させる。
「……ならば、これはどう対処する?」
俺の姿を見失い、困惑しながらも『障壁』を展開する。
瞬間、速度が増した槍は凄まじい勢いで障壁を貫き、骸骨の頭蓋に届くまであと僅かというところで止まった。
その結果を確認して、俺は魔力で構築した足場を蹴って骸骨に肉薄する。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
骸骨が絶叫を上げて後退した刹那、視界が死骸霊王の配下の幽霊によって埋め尽くされた。
俺は主を護る盾のように立ち塞がる幽霊を魔力で包み込み、一点に凝縮させて押し潰す。
瞬時に魔力で構築した剣を、骸骨の頭蓋目掛けて突きを繰り出したが、骸骨の感が意外と鋭かったのか躱された。
けれど、骸骨も完全に俺の攻撃を躱しきれなかったらしく、左腕が宙を舞ってボトリと地面に落下した。
骸骨に最期の一撃を叩き込もうと剣を戻した瞬間───骸骨の右手に肩を押され、俺は体勢を崩してしまった。
「───ッ」
俺を突き飛ばし、その反動で地面に降下していく骸骨。
魔力で構築した足場を使って体勢を立て直し、それを複数作成して階段にする。
剣に虹に煌めく魔力を集約させていきながら駆け降りていくと、急に骸骨が『飛行』を発動させて高速で上空に昇っていく。
俺は魔力で強化した下半身の膂力を駆使して骸骨よりも上空に跳躍し、剣を握る掌に力を込めた。
「滅べ、魔術師の骸」
俺は手向けの言葉を告げ、剣を袈裟斬りが如く振り下ろす。
剣を覆っていた虹の輝きが剣筋から離れ、三日月状の刃と成り骸骨を両断する。
「アリガ、トウ……」
骸骨はその瞬間、囁くよりも小さく声を発した。
声なき声を発していた骸骨とは思えないほどに、その声は透き通っていた。
「えっ───」
骸骨こと死骸霊王は、瞬く間に空中で塵となって消えてしまった。
俺は身体を魔力で覆って空気抵抗を減らしながら落ちていき、魔力を地面に向けて放って着地時の衝撃を殺すことに成功した。
「あの髑髏は、やはり殺しておくべきだったのぅ」
嗄れた呟きが聞こえたことに驚いて顔を上げると、漆黒の瞳の青年が俺を見下ろしていた。
その青年は掌で乱雑に灰色の髪をオールバックにまとめて、醜悪な怪物のように唇の端を吊り上がらせて嗤った。
魔術師の骸は、塵と化す───
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