237話 死屍狂騒
〘 禁戒幽獄〙の第8階層:〘死獄界〙にて───
俺は光が消え去ったのを感じ、目を開ける。
そこには、思いもよらぬ光景が広がっていた。
「うわぁ……」
無数の朽ちた剣が突き刺さる墓地。
至るところに十字架の墓石が等間隔に設置され、微かに腐敗臭がする。
「遺骸葬墓……」
「安寧を求める死者たちの楽園、だったか」
マーリンの呟きに、俺はアリシアが言っていた言葉を発する。
俺の発言にマーリンは無言で頷き、墓地へと視線を移した。
途端、カタカタッという音が連鎖するように響く。
「来ますよ、テオス兄様」
マーリンが呟くと、周辺に積み重なった鎧が次々と立ち上がる。
その鎧は骸骨が装着しているもので、その姿は衛兵のようにも見える。
骸骨兵は、右手で剣を握り、左手で盾を構え、ふらつきながら歩いてくる。
「骸骨人か」
死角から来た骸骨兵の1体が、俺に突きを繰り出してくる。
骸骨兵の刺突を紙一重で交わし、魔力を巡らせて強化した拳で殴打する。
すると、骸骨兵は殴られた衝撃で消し飛ぶかのように砕け散った。
「よしっ!」
近場の骸骨人を倒したので、周囲を確認してみる。
すると、ガーゴイルが大勢の骸骨兵に包囲網を形成されていた。
「電磁遮蔽!!」
瞬間、ガーゴイルから蒼白の波動が生じ、大勢の骸骨兵を吹き飛ばした。
骸骨兵は地面に打ち付けられたことで次々と砕け散っていく。
が、魔力を介していない攻撃だったことで、骸骨兵はの骨は時が遡るかのように修復された。
恐怖を感じないのか、まだガーゴイルの元へ向かって行こうとする。
「───【断絶排除】」
ヘンゼルが迫りくる骸骨兵に向かって歩き出す。
まっすぐ骸骨兵を見据え、右手に持っている剣鉈で一閃する。
その剣圧で骸骨兵の上半身が地面に落ち、数秒遅れて下半身が前方に倒れた。
骸骨兵から溢れ出ていた微かな紫色の靄が空気に溶け込むように消える。
そこには、砕け散った骸骨人が山のように積み重なっていた。
「あ、あれは……!」
リリスが墓地に向かって指をさすと、地面が隆起して人間の手が伸びる。
そこから薄墨色の肌に裂傷が目立つ大勢の死屍人が這い出てきた。
死屍人の背後には骸骨人が、その上空には青紫に光る幽霊が漂っていた。
「寝てるときに騒いだら、起きてくるに決まってるよね」
俺はそう言って、魔力で剣を構築して突撃する。
前方に駆け、のそのそと歩くゾンビたちを斬り伏せながら進んでいく。
するとゾンビたちは俺の視界に入らないようにと横に逃げていた。
左右から襲い来る波のように、ゾンビたちは俺の動きを封じようと押し寄せてきた。
「テオス兄様っ!」
一瞬、マーリンの声が聞こえた気がした。
だが今は戦闘中、他のことに意識を割けるほど俺は強くない。
剣を扱うのが苦手だから、これを機に克服しようとしていたが……。
「───ゾンビには不向きか」
俺は魔力を爆発的に増大させて、群がるゾンビたちを吹き飛ばす。
そして、ついでに魔力を波動として放出し幽霊を『物質』にしておく。
その影響で魔力を遠くまで飛ばしたことで、俺は死骸霊王の存在を確認した。
だが、そのせいでゾンビたちが俺の近くまで迫ってきていることに気づくのが遅れた。
「テオス兄様っ、死屍人達の動きを止めます!」
マーリンは離れたところから大声で俺に伝えてきた。
すると、上空に黄色の魔術紋が構築され、瞬く間に周囲一帯を純白の光が染めた。
発言通り死屍人達の動きが、時が止まったかのように静止する。
「『聖光』を使ってくれたのか。ありがとうっ!」
地を這うように体勢を低くして、死骸霊王に向かって駆け出す。
魔力で針を構築し、骸骨人と死屍人の脚部を縫っていく。
暫く走っていると骸骨人と死屍人の数も減ってきて、黒く巨大な城がある開けた場所が見えてきた。
俺は少しずつ走る速度を落としていき、最終的に歩きながら城に近づいていく。
「う〜ん……どこにいるんだ? 死骸霊王」
上空からバチバチッという音が聞こえ、動きを止めると俺の眼前に雷が落ちた。
雷の経路を目で追った先には、漆黒の衣をまとう碧眼の髑髏が空に張り付くように浮いていた。
姿を現した魔術師の骸───
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