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【五章連載】ディオス・ウトピア 〜神々の王は平穏を望む〜  作者: 神威皇華
第五章 神威城塞編
235/240

235話 戮護鋼翼サハクィエル


 ガーゴイルが背中から展開した機械の両翼。

 そこには、銃状の鋭利な風切羽がついていた。


 「標準固定(ロックオン)


 碧い瞳の奥にI/O電源のマークに似た模様が淡く輝いた。

 すると両翼が円を描くように駆動し、銃状の風切羽が紫雲の方向に旋回した。

 先端が大気を吸引して球状に圧縮している様は、銃弾を装填しているように見えて。


 「そうか、それが狙いか」


 銃状の風切羽、大気の圧縮、紫雲への攻撃手段。

 その光景を見て、俺はガーゴイルが何をしようとしているのかを理解した。

 瞬時に魔力を帯びた槍を6本だけ紫雲に貫通させて、魔力を流し込む。

 魔力を流し込まれたことで、紫雲の微細な粒子同士が繋がり合って『物質』と成った。


 「ありがとうございます!」


 ガーゴイルはそう言って頭を下げると、すぐに紫雲に視線を戻した。

 対して俺は、集中力を乱さないために返事をすることなく頷くだけに留めた。

 瞬く間に球状に圧縮された大気は、ガーゴイルの頭上で煙火玉のような塊となる。

 周囲の大気が震え始め、球状の大気が純白に染め上げられていく。


 「颶風旋縮砲(エアブラスト)ッ───!!」


 刹那、一条の光が天に向かって放たれる。

 その光は魔力を以って実体を与えられた紫雲を純白で染め、消し飛ばした。

 白光が消失すると、漆黒の夜空に星々が散りばめられ彩られているわけではなかった。

 正確には無数の霊体が青白い光を放ちながら、満天の星空を背に蠢いている。

 

 「な……っ!?」


 「あれは……!」


 ヘンゼルとガーゴイルが声を上げる。

 数え切れないほどの霊体が、満月の光を浴びている。

 見ただけでは決して、その全貌を理解することはできない。


 「あれほどの悪霊(ガルラ)がいたというの!?」


 「え、えぇ、そのようですね……」


 愕然とするマーリンに対して、呆然としながら頷くリリス。

 無数の霊体は徐々に動かなくなると、爆発的に増大させた殺気を放つ。

 瞬間、青白い軍勢が狂ったように群れながら襲いかかってくる。

 

 「皆を傷つけようとしたこと、許しはしない」


 俺は周囲に魔力の波動を放ち、無数の霊体を触れられるように『物質』に変える。

 同時に、右手を伸ばして魔力を収束させて1つの球体を作り出した。


 「呑み込め」


 青白い軍勢は俺に接触する寸前で止まり、その姿が掻き消える。

 魔力球の周囲に渦巻く波に、青白い軍勢が絡め取られていく。

 実体を得た青白い軍勢は、魔力球に吸収されないようにと速度を落とす。

 だが、後方の軍勢に押されて抵抗虚しく魔力球に吸い込まれていく。


 「……これで、終わりだ」


 俺は合掌をすることで、相手への敬意を示す。

 同時に、全ての軍勢を吸収した魔力球を押し潰した。

 その衝撃で魔力球は消し飛び、静寂が訪れる。

 すると、ガーゴイルが俺の元まで駆け寄ってきた。


 「テオス様! 紫雲を実体化してもらって、ありがとうございますっ!」


 「こちらこそ。ガーゴイルが紫雲を取り払ってくれたから、あの霊体を一掃できたわけだから」


 「えへへ……」


 ガーゴイルは頬を朱に染めて笑う。

 その時、視線を感じるとともに背筋に冷たいものが走った。

 ガーゴイルの背後に目をやると、マーリンとリリスが半目で睨んでいた。


 「私のお兄様に、私のお兄様に私のお兄様に私のお兄様にっ!」


 「もう、考える暇を与えずに契りを交わすしか……」

 

 その場の異様な雰囲気を感じ、脳は瞬時に判断を下した。

 いち早くリリスとマーリンの元へと戻れ───と。


 「ガ、ガーゴイル。これからどうするかを話し合おうか」


 「そっ、そうですね!」


 俺はガーゴイルとともに、リリスとマーリンの元へ歩いていく。

 あくまで自然に、焦っていることを悟らせないために。



嫉妬は、愛しているが故に───

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