235話 戮護鋼翼サハクィエル
ガーゴイルが背中から展開した機械の両翼。
そこには、銃状の鋭利な風切羽がついていた。
「標準固定」
碧い瞳の奥にI/O電源のマークに似た模様が淡く輝いた。
すると両翼が円を描くように駆動し、銃状の風切羽が紫雲の方向に旋回した。
先端が大気を吸引して球状に圧縮している様は、銃弾を装填しているように見えて。
「そうか、それが狙いか」
銃状の風切羽、大気の圧縮、紫雲への攻撃手段。
その光景を見て、俺はガーゴイルが何をしようとしているのかを理解した。
瞬時に魔力を帯びた槍を6本だけ紫雲に貫通させて、魔力を流し込む。
魔力を流し込まれたことで、紫雲の微細な粒子同士が繋がり合って『物質』と成った。
「ありがとうございます!」
ガーゴイルはそう言って頭を下げると、すぐに紫雲に視線を戻した。
対して俺は、集中力を乱さないために返事をすることなく頷くだけに留めた。
瞬く間に球状に圧縮された大気は、ガーゴイルの頭上で煙火玉のような塊となる。
周囲の大気が震え始め、球状の大気が純白に染め上げられていく。
「颶風旋縮砲ッ───!!」
刹那、一条の光が天に向かって放たれる。
その光は魔力を以って実体を与えられた紫雲を純白で染め、消し飛ばした。
白光が消失すると、漆黒の夜空に星々が散りばめられ彩られているわけではなかった。
正確には無数の霊体が青白い光を放ちながら、満天の星空を背に蠢いている。
「な……っ!?」
「あれは……!」
ヘンゼルとガーゴイルが声を上げる。
数え切れないほどの霊体が、満月の光を浴びている。
見ただけでは決して、その全貌を理解することはできない。
「あれほどの悪霊がいたというの!?」
「え、えぇ、そのようですね……」
愕然とするマーリンに対して、呆然としながら頷くリリス。
無数の霊体は徐々に動かなくなると、爆発的に増大させた殺気を放つ。
瞬間、青白い軍勢が狂ったように群れながら襲いかかってくる。
「皆を傷つけようとしたこと、許しはしない」
俺は周囲に魔力の波動を放ち、無数の霊体を触れられるように『物質』に変える。
同時に、右手を伸ばして魔力を収束させて1つの球体を作り出した。
「呑み込め」
青白い軍勢は俺に接触する寸前で止まり、その姿が掻き消える。
魔力球の周囲に渦巻く波に、青白い軍勢が絡め取られていく。
実体を得た青白い軍勢は、魔力球に吸収されないようにと速度を落とす。
だが、後方の軍勢に押されて抵抗虚しく魔力球に吸い込まれていく。
「……これで、終わりだ」
俺は合掌をすることで、相手への敬意を示す。
同時に、全ての軍勢を吸収した魔力球を押し潰した。
その衝撃で魔力球は消し飛び、静寂が訪れる。
すると、ガーゴイルが俺の元まで駆け寄ってきた。
「テオス様! 紫雲を実体化してもらって、ありがとうございますっ!」
「こちらこそ。ガーゴイルが紫雲を取り払ってくれたから、あの霊体を一掃できたわけだから」
「えへへ……」
ガーゴイルは頬を朱に染めて笑う。
その時、視線を感じるとともに背筋に冷たいものが走った。
ガーゴイルの背後に目をやると、マーリンとリリスが半目で睨んでいた。
「私のお兄様に、私のお兄様に私のお兄様に私のお兄様にっ!」
「もう、考える暇を与えずに契りを交わすしか……」
その場の異様な雰囲気を感じ、脳は瞬時に判断を下した。
いち早くリリスとマーリンの元へと戻れ───と。
「ガ、ガーゴイル。これからどうするかを話し合おうか」
「そっ、そうですね!」
俺はガーゴイルとともに、リリスとマーリンの元へ歩いていく。
あくまで自然に、焦っていることを悟らせないために。
嫉妬は、愛しているが故に───
最後まで読んで頂きありがとうございます!
「面白い」 「次の話が気になる」と思って頂けましたら、下の☆☆☆☆☆から応援宜しくお願いします!
感想やいいね、ブクマ登録などして頂けると嬉しいです!




