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【五章連載】ディオス・ウトピア 〜神々の王は平穏を望む〜  作者: 神威皇華
第五章 神威城塞編
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234話 魔力の神髄


 「……力加減、間違えたかな」


 俺は落下の衝撃で陥没した地面を見ながら呟いた。

 斬り刻んだ肉片が徐々に黒く染まり、塵となって空気と同化していった。

 

 「よしっ、皆のところに戻るか」


 俺はそう言って踵を返す。

 少し歩いて、皆との距離が想像以上に離れていることに気づいた。


 <操縦者(マスター)を確認>


 突如として、無機質な声が脳に響いた。

 その声に言葉にできない悪寒を感じ、魔力で脚力を強化して跳躍した。

 俺は弧を描いて着地し、皆と合流した瞬間。

 

 <転移機構(ワープポータル)───起動>


 再度、無機質な声が脳に響き、周囲の景色がぐにゃりと歪んだ。



 *   *   *



 そこには闇を城の形にしたと錯覚するほどに黒い城があった。


 「黒い城……」


 俺は見慣れない景色に驚き、声を漏らした。


 「この城は、『死魂獄霊城(エーリューズニル)』!?」


 マーリンは見たことがないほどに驚いている。

 それに対しリリスは、我関せずといった雰囲気で佇んでいる。


 「あれは神創機装(オートメーション)ネフィリムの声。なら、誰かが起動させたとでも……?」


 少女が頭を抱えて混乱している。

 完全に周囲の状況が異質になっていることに意識が向いていない。


 「───なにかくるっ!」


 マーリンが叫んだ瞬間、上空から微かに音が聞こえた。

 物体が落下する際の空気抵抗によって生じる音が。

 それも連鎖するように複数の音が響き、音量も大きくなってきている。


 「<混沌全能(オールマスター)>」


 俺は魔力を解き放ち、その場にいる全員を覆った。

 すると、黒い靄を放つ紫色の槍が無数に降ってきた。

 その槍は際限なく雨のように降り注ぎ、硬化させている魔力の壁に罅を入れていく。

 時間が経過すればするほど、俺の魔力でできた防壁は壊れていく。


 「……防壁を展開するほうが魔力消費量が大きいな」


 俺を中心として周囲を警戒している皆を魔力の円で包み込み、魔力で作った防壁を解除した。

 皆の周囲を回っている魔力の円は、打ち漏らしたときの保険をかけておく。

 そして魔力を球状に分散させ、迫りくる槍に接触させた。


 「その槍を使わせてもらう」


 小さな黒い球体が槍に触れると黒い靄が消える。

 俺の意思で動くようになったことを確認して、制御を奪った槍をまだ制御を奪っていない槍に当てていく。

 それは感染症が蔓延していくように急速に広がり、敵の力を自らの力として吸収していく。


 「……効率的に、魔力を使っている」


 「えぇ、魔力の特性を理解している証拠ですね」


 マーリンとリリスが何か喋っているが、槍の打ち合いによる音で全く聞こえない。

 まぁ、今はこの槍が皆に当たらないようにすることに集中しよう。

 もし打ち漏らして誰かに当たってしまえば、俺は後悔するだろうからな。


 「やはり、この靄は瘴気と見て間違いない。ということは───これは〔瘴槍(グラ)〕?」


 冷静さを取り戻した少女は、何かに気づいたようだ。

 だけど、何を言っているかまではよく分からない。

 というかこの槍、誰かが投げているものなのか?

 飛距離を考えると、この量の槍を投擲している人物がいるとは考えにくいのだが。


 「槍が降ってくる理由がわかりました! あの紫色の雲です!」


 碧眼の少女はそう言うと、上空にある紫雲に向けて指をさす。

 俺が紫雲に視線を移し、目を凝らしてみると、雲の奥から確かな敵意を感じた。


 「……なにか、いるな」


 「そうなのですか? 私はなにも感じませんが……」


 「いや、確かにいる。あの雲の向こうになにかがいる」


 俺の発言にリリスが疑問を呈すと、マーリンが俺の発言を肯定した。

 安心感を覚えつつ、俺は制御を奪った槍で迎撃し続ける。


 「テオス兄様、魔力は大丈夫ですか?」


 「あぁ、圧縮した魔力で球体を作ったから問題ない」


 必要最低限の会話───けれど、そこには相手への確かな尊敬の念が込められている。

 戦闘しているからこそ、最低限の会話で必要な情報を集めることが重要である。

 この言葉は、訓練をする前にアーテルから聞かされた言葉であり、訓練中に永遠と思えるほど言われ続けた言葉でもある。 


 「ガーゴイル、問題なし!」


 ガーゴイルと呼ばれた少女は頷いて、その碧眼は紫雲を見据えた。

 覚悟を決めた碧い瞳は、怜悧な顔立ちと相俟って美に昇華されている。


 「光学迷彩(アシミレーション)解除───戮護鋼翼(コンプレッサー)サハクィエル」


 少女の背後が虹色に染まり、歪められた。

 それは霧が晴れるように消え去り、機械仕掛けの天使の(はね)が顕現した。



ガーゴイルは、機械の翼を展開し───

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