234話 魔力の神髄
「……力加減、間違えたかな」
俺は落下の衝撃で陥没した地面を見ながら呟いた。
斬り刻んだ肉片が徐々に黒く染まり、塵となって空気と同化していった。
「よしっ、皆のところに戻るか」
俺はそう言って踵を返す。
少し歩いて、皆との距離が想像以上に離れていることに気づいた。
<操縦者を確認>
突如として、無機質な声が脳に響いた。
その声に言葉にできない悪寒を感じ、魔力で脚力を強化して跳躍した。
俺は弧を描いて着地し、皆と合流した瞬間。
<転移機構───起動>
再度、無機質な声が脳に響き、周囲の景色がぐにゃりと歪んだ。
* * *
そこには闇を城の形にしたと錯覚するほどに黒い城があった。
「黒い城……」
俺は見慣れない景色に驚き、声を漏らした。
「この城は、『死魂獄霊城』!?」
マーリンは見たことがないほどに驚いている。
それに対しリリスは、我関せずといった雰囲気で佇んでいる。
「あれは神創機装ネフィリムの声。なら、誰かが起動させたとでも……?」
少女が頭を抱えて混乱している。
完全に周囲の状況が異質になっていることに意識が向いていない。
「───なにかくるっ!」
マーリンが叫んだ瞬間、上空から微かに音が聞こえた。
物体が落下する際の空気抵抗によって生じる音が。
それも連鎖するように複数の音が響き、音量も大きくなってきている。
「<混沌全能>」
俺は魔力を解き放ち、その場にいる全員を覆った。
すると、黒い靄を放つ紫色の槍が無数に降ってきた。
その槍は際限なく雨のように降り注ぎ、硬化させている魔力の壁に罅を入れていく。
時間が経過すればするほど、俺の魔力でできた防壁は壊れていく。
「……防壁を展開するほうが魔力消費量が大きいな」
俺を中心として周囲を警戒している皆を魔力の円で包み込み、魔力で作った防壁を解除した。
皆の周囲を回っている魔力の円は、打ち漏らしたときの保険をかけておく。
そして魔力を球状に分散させ、迫りくる槍に接触させた。
「その槍を使わせてもらう」
小さな黒い球体が槍に触れると黒い靄が消える。
俺の意思で動くようになったことを確認して、制御を奪った槍をまだ制御を奪っていない槍に当てていく。
それは感染症が蔓延していくように急速に広がり、敵の力を自らの力として吸収していく。
「……効率的に、魔力を使っている」
「えぇ、魔力の特性を理解している証拠ですね」
マーリンとリリスが何か喋っているが、槍の打ち合いによる音で全く聞こえない。
まぁ、今はこの槍が皆に当たらないようにすることに集中しよう。
もし打ち漏らして誰かに当たってしまえば、俺は後悔するだろうからな。
「やはり、この靄は瘴気と見て間違いない。ということは───これは〔瘴槍〕?」
冷静さを取り戻した少女は、何かに気づいたようだ。
だけど、何を言っているかまではよく分からない。
というかこの槍、誰かが投げているものなのか?
飛距離を考えると、この量の槍を投擲している人物がいるとは考えにくいのだが。
「槍が降ってくる理由がわかりました! あの紫色の雲です!」
碧眼の少女はそう言うと、上空にある紫雲に向けて指をさす。
俺が紫雲に視線を移し、目を凝らしてみると、雲の奥から確かな敵意を感じた。
「……なにか、いるな」
「そうなのですか? 私はなにも感じませんが……」
「いや、確かにいる。あの雲の向こうになにかがいる」
俺の発言にリリスが疑問を呈すと、マーリンが俺の発言を肯定した。
安心感を覚えつつ、俺は制御を奪った槍で迎撃し続ける。
「テオス兄様、魔力は大丈夫ですか?」
「あぁ、圧縮した魔力で球体を作ったから問題ない」
必要最低限の会話───けれど、そこには相手への確かな尊敬の念が込められている。
戦闘しているからこそ、最低限の会話で必要な情報を集めることが重要である。
この言葉は、訓練をする前にアーテルから聞かされた言葉であり、訓練中に永遠と思えるほど言われ続けた言葉でもある。
「ガーゴイル、問題なし!」
ガーゴイルと呼ばれた少女は頷いて、その碧眼は紫雲を見据えた。
覚悟を決めた碧い瞳は、怜悧な顔立ちと相俟って美に昇華されている。
「光学迷彩解除───戮護鋼翼サハクィエル」
少女の背後が虹色に染まり、歪められた。
それは霧が晴れるように消え去り、機械仕掛けの天使の翼が顕現した。
ガーゴイルは、機械の翼を展開し───
最後まで読んで頂きありがとうございます!
「面白い」 「次の話が気になる」と思って頂けましたら、下の☆☆☆☆☆から応援宜しくお願いします!
感想やいいね、ブクマ登録などして頂けると嬉しいです!




