231話 タコライス
嵌獣獅王が倒されたことで、周囲に浮いていた亡霊が散っていく。
その様子をジッと眺めながら、マーリン様は呟いた。
「……驚いた。ヘンゼルがここまで強かったなんて」
「ヘンゼルは対動植物に於いては“魔帝特殊部隊”内で最強なんですよ」
マーリン様が驚き、目を見開いている。
それに対しリリス様はというと、とても空腹なようだ。
唸り声を上げながらお腹を抑えて、私の元まで歩いてきた。
「ヘンゼル、お腹が空いたわ」
「何か食べたい料理でもあるんですか?」
私が訊ねると、リリス様は満面の笑みで即答した。
「ガトーショコラ!」
「却下します」
「え〜、なんで!?」
すかさず理由を訊ねてくるリリス様。
私は面倒に感じながらも、簡潔に理由を説明した。
「テオス様やマーリン様、ガーゴイルも食べるというのに、よりによってスイーツだからです」
「簡単よ! 今の私にたりないもの、それは糖分よ!!」
リリス様は『ふふん』をいうように胸を反らす。
私はそんなリリス様に呆れた視線を向けながら「そうですか」と受け流した。
すると、リリス様は涙目になりながら私に縋りつき、必死に懇願してきた。
「あーっ! 待って待って! お願い、少しだけでもいいからスイーツが食べたいの!!」
「はぁ……わかりました。前に作った、マフィンのあまりでもいいですか?」
これ以上は埒が開かないと判断して、私は『収納空間』内からチョコレートマフィンを2つほど取り出して、リリス様に手渡す。
「ありがとうっ!」という声と同時に───誰の手も届かぬ上空に飛翔し、糖分であるチョコレートマフィンを満面の笑みを浮かべながら頬張り始めた。
「さて、と……適当に余っている食材を使って、作るとしますか」
私は『収納空間』内に手を入れて、これから作る料理を模索する。
収納されている材料を把握し終えると、今ある材料で作れて尚且つ栄養のバランスがいいものを思案する。
そして私は、あの料理を作る為に必要な材料が、全て揃っていることに気づいた。
「【至高厨房構築】」
その刹那、テオス様が創造した城の隠し部屋にあったものと酷似した厨房が出現する。
私は厨房が出現したのを確認して、『収納空間』から合い挽き肉・玉ねぎ・レタス・トマト・ピザ用チーズ・ケチャップ・ウスターソース・カレー粉・醤油・塩胡椒を取り出す。
そして、レタスから芯を取り除き、『水渦球』で生成した50℃くらいのお湯でレタスを手早く洗う。
「ガーゴイル! 玉ねぎをみじん切りに、レタスを千切りに、トマトを角切りにして!」
「は、はい! 了解しましたっ!」
私は皮を剥いて洗っておいた玉ねぎ1個と1/4個、今洗い終わったレタス1玉、洗っておいたトマト1/2個を大きめのボウルと一緒に手渡す。
そして、私がいつも包丁として使っている愛剣─── “天寵廻剣”も渡しておく。
「玉ねぎから先にお願い。終わったら、私のところまで持ってきてね」
私はそう言って、ご飯を炊く準備をした。
ボウルに5合分の白米を入れ、水で優しく洗って炊飯器に入れる。
そしたら、炊飯器に内蔵されている魔導機器を起動して加熱させる。
「よしっ!」
私はタコミートを作る為の気合を入れ、フライパンを熱し始める。
十分に温まったことを確認してサラダ油を敷くと、背後から声を掛けられた。
「終わりましたよ、玉ねぎのみじん切り」
「ありがとう。あ、トマトを切り終わったらケチャップと混ぜといて」
私はボウルに入れられた玉ねぎを受け取り、プライパンに入れて半透明になるまで炒める。
そしたら合い挽き肉500gを入れて、ちゃんと火が通ったらケチャップを大匙10杯、ウスターソースを大匙5杯、醤油を大匙5杯、カレー粉を小匙5杯、塩胡椒を適度に入れて、味を馴染ませる為によく混ぜる。
ガーゴイルから千切りレタスとトマトソースを受け取り、最後の仕上げに取り掛かる。
ご飯・チーズ・レタス・タコミート・トマトの順番で皿に盛り付けていき、ふとその存在に意識が向いた。
「……あっ!」
ヘンゼルは衝撃を受けた。
スープという概念が、完全に脳から消え去っていたことを。
その事実は、持っていた皿を落としかけるほどの大きな衝撃であった。
思い出したスープの存在───
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