229話 煌耀銃砲バラキエル
「……うぅ」
「目覚めましたか、ガーゴイル」
私が頭痛に襲われながら立ち上がると、リリス様が漆黒の翼を広げて飛んでいた。
〔界淵層罅〕に呑み込まれるまでいた〘冥獄界〙となんら変わらない空を。
「私達は〔界淵層罅〕に呑み込まれたんじゃ……?」
「えぇ、呑み込まれたわ。けれど、〔界淵層罅〕は私達を異物ではなく、〘冥獄界〙に生息していた生物と認識した」
「そんなことが……!?」
リリス様は「えぇ」と小さく頷いて、『そんなことがあり得る』ということを伝えてきた。
その証拠に〘冥獄界〙に生息している生物が、私達を敵と認識して迫ってきている。
「迎撃を開始しますっ!」
私は即座に光学迷彩で隠蔽していた武装を解き放った。
解き放たれるは、2機1対の煌耀銃砲───それは銃と呼ぶにはあまりに大きく、大砲と呼ぶにはあまりに細い。
やはり何度見ても、銃身だけを巨大化させているようにしか見えない。
「【解掌倣製】」
私は一瞬で2038機1019対の煌耀銃砲を作成した。
そうしている間にも、〘冥獄界〙に生息している生物達───確認できただけでも屍喰鬼、幽霊、冥魂霊、死靈の4種族が距離を詰めてきている。
「───光芒弾!」
刹那、煌耀銃砲を同心円状に340機170対、680機340対、1020機510対と展開し、広範囲に飽和攻撃を行なう。
計2040機の煌耀銃砲から放たれる光芒弾は───爆発性はなくとも、その射出速度と着弾威力によって圧倒的な破壊力を有している。
「【夢幻創掌】」
スキルの発動を告げる声が聞こえた瞬間、私達を虹に耀く半球が包み込む。
それは「何か」から私達の姿を隠す幻術のようであり、私達を護る障壁のようでもあった。
刹那───ドゴオオオンと、虹に耀く半球を覆い尽くすほどの爆発が生じる。
それにより、地面は破壊されながら焼け焦げ、粉塵が巻き起こる。
「……今の爆発はいったい!?」
「あぁ、そういえば……1体だけいましたね。〘冥獄界〙を縄張りとしている存在───」
「そう、嵌獣獅王ネメオスが」
私の疑問に答えたリリス様を、森護霊の少女が遮る。
森護霊の少女を目にした瞬間、私はその顔に見覚えがあることに気づいた。
けれど、私の知っている存在の種属は森護霊ではなく───
「おや、マーリン。やっと起きたのですか」
「そうね。あんなに煩くされたら、誰だって起きるわよ……」
マーリンと呼ばれた森護霊の少女は、未だ眠っている2人へと視線を落とした。
その様子を見て、リリス様が「あぁ……ヘンゼルですか」と呆れていた。
刹那、嵌獣獅王の咆哮が爆発で生じた黒煙を晴らした。
そこには───漆黒の体毛に、黒蛇の尻尾と黄金の鬣が目立つ獅子が姿を現した。
「……どうします?」
「そんなの決まってます! 私が撃滅機イロウルと煌耀銃砲バラキエルを使って飽和攻撃を行ないますっ!!」
「それは許容できないわ」
「絶対にダメ」
リリス様に続いてマーリン様も私の案を否定した。
驚愕のあまり、私は理由を気かずにはいられなかった。
「なっ、なぜなのですか!?」
私の問いに、リリス様とマーリン様の声が重なる。
「それは、やり過ぎるからに決まってるじゃない。ねぇ?」
「そう……やり過ぎるから。“煌耀銃砲”での飽和攻撃が、その証明」
リリス様は私から目を背け、マーリン様へと視線を移す。
マーリン様はリリス様の発言に頷いて、私の案を否定した理由を告げた。
「なら、私がやる」
私達は背後から聞こえた声に驚き、振り返る。
そこには、眠そうに目を擦るヘンゼルの姿があった。
「ふわぁああ」と大きなあくびをした後に、真っ直ぐ嵌獣獅王を見据えた。
目覚めるは、食物神───
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