228話 次元の歪み
漆黒に包まれている“冥獄巌窟”と“死魂獄霊城”を、神秘的な光が照らす。
その光が現実であることを理解していても、幻のような非現実的な雰囲気を帯びていた。
「今の、光は……?」
『ウリディンム、どうかしたか!?』
私の呟きはリル様の発言により掻き消され、ウリディンムはリル様の元へ走り始めた。
瞬く間にウリディンムは“死魂獄霊城”の扉の前、リル様の眼前にまで距離を詰めていた。
『はい、アーテル様から“界隔虹煌神壁”の封鎖を行なったとの報告が!』
『そうか。先程の光との関係は───』
何かの気配を感じたのか、リル様の視線が上空に向かった。
途端、僅かながら“神”の気配を感じ取った。
『ウリディンム、命令だ。ガーゴイルを“獄神山”の麓まで連れて往け!』
『承知しました!』
ウリディンムはそう言うと、私を頭突きで上空へ飛ばした。
そして漆黒の体毛によって衝撃が緩和され、ウリディンムの背に強引に乗せられた。
私をじっと見つめる彼女の瞳は『振り落されないでね』と言っているようで。
『<干渉遮断>』
刹那、ウリディンムの魔力が解放された。
物質から干渉されなくなるという性質をもつ魔力であり、ウリディンムが触れている存在もその影響を受けるというオマケつき。
「魔力を解放した、ということは……!」
私の呟きを肯定するかのように、ウリディンムが動いた。
『地面からの干渉』を遮断せずにいたのは、飛躍する際の足場とする為だったようだ。
一瞬の揺れが訪れるのと同時に、段階的に『空気抵抗からの干渉』を遮断しているのか徐々に速度が上昇していく。
「ウリディンム! これ以上っ、加速されると景色の鑑賞が───」
『全速力で走れる』という状況によって興奮状態のウリディンムに、私の声が届くはずもなく。
瞬く間に加速していき、空が投影されている洞窟を駆け抜け、漆黒の火成岩で形成された大地を透過し───数分前までいた“獄神山”の麓へと到着していた。
「えっ……?」
「あっ、フクシア様!」
ウリディンムから降りたガーゴイルは、桃髪の少女を見るなり禁句を告げた。
現在の“神”ではなく、過去の“神”から授けられた仮名でリリスを呼んだ。
そこから湧き出る怒りは、周囲に恐怖を振りまくほどの微笑み。
「どうしたんですか? そんなに私、面白いことを言いましたか?」
張り詰めた空気の中、ガーゴイルの脳天気な声が響く。
対してウリディンムは危険を察知し、逃げるように地面を透過して“死魂獄霊城”へと戻っていく。
「その仮名で、私を呼ぶとは……アーテルから何も訊かされていないようですね」
フクシア様───いえ、リリス様が「納得した」とでも言うように頷いた。
その様子を確認して胸を撫で下ろしていると、周囲に複数の“神人”たちが倒れていることに気がついた。
<“禁戒幽獄”へ至ろうとする存在よ。“界淵層罅”をくぐるのであれば、一切の希望を捨て去るがよい>
ジジジッ───という電子音が響き渡り、身体が宙に浮いた。
ゆっくりと上空に吸い上げられているという現状に疑問を抱き、その原因があるであろう空を見上げる。
「これ、は……『次元の歪み』!?」
視線の先には、漆黒に染まる“冥獄界”の空を切りを裂いて『次元の歪み』と呼ばれる“界淵層罅”が顕現していた。
吸収範囲内にいる全ての概念を吸収されている感覚に襲われながら、『次元の歪み』に引きずり込まれる。
そうして私達は、常識が通じない亜空間へと呑み込まれた。
世界は歪み、“奈落”への扉が開かれる───
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